遺伝子改変マウスが数多く開発され、遺伝子機能解明に活用されるが、正確な表現型解析には遺伝背景の充分な統御が必要で、これを効率良く検出可能な遺伝子プロファイリングシステムを開発することが本研究の目的である。前年度までに、384プレートにセットするための約300マーカーを選抜し、その中から192マーカーの遺伝子プロファイリングシステムを構築し全体の流れや運用の評価をおこなった。最終年度では、C57BL/6 (B6)亜系統間を詳細に判別可能とするため、データベースより得たSNPs情報を元に調査し、およそ140か所のSNPsマーカーをゲノム上に確認した。その中から我が国の主要な生産ブリーダー由来の7つのB6亜系統を区別可能なSNPsマーカー群の開発に成功した。これらを加え192マーカーを再構成することで、充分に精度の高い遺伝背景チェックシステムを構築できた。すなわち本システムでは、各B6亜系統の生産者ブリーダーレベルでの遺伝背景均一性、父系(Y染色体)・母系(mtDNA)の各由来系統をSNPsマーカーより検出、同時にベクター由来導入遺伝子を検出することで、高精度かつ効率的な遺伝背景検出を実現した。またTaqMan Genotyper (Applied biosystems)の出力データは、Microsoft Accessをベースに開発したツールを用いて省力的な表形式パネルへの変換を実現した。加えて、一連のマーカー開発でB6/JとB6/N亜系統間のSNPsマーカーが数多く得られた。交配系統が近縁な場合、変異遺伝子の表現型への効果が明瞭になり、本システムは遺伝子マッピングへの転用が有効と考えられた。ゆえに、B6/JとB6/N間SNPsマーカーを活用し約100 lociからなる遺伝子マッピングシステムへ発展させた。これら構築したシステムをホームページに公開した(備考参照)。
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