研究課題/領域番号 |
24700443
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
本橋 秀之 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, モデル動物開発研究部, 科研費研究員 (20554380)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 発生工学 |
研究概要 |
疾患モデル作出ための発生工学に利用する卵子は成熟卵子や受精卵であり,通常,一度に多くの個数を必要とする.一方で,霊長類の卵巣内には大量の未成長卵子が原始卵胞の形で存在するが,生涯の内に排卵まで至る卵子の総数はその一部に過ぎず,大半は成長することなく終わる.これらの未成長卵子を培養および移植等により利用することが可能になれば,霊長類における発生工学に使用する卵子の新たな供給源として期待できる.本研究では霊長類であるコモンマーモセット雌個体から卵巣組織を採取し,原始卵胞由来未成長卵子の体外培養が可能か検討するとともに,レンチウィルスベクターによるマーカー遺伝子の導入が可能か検討した.合わせて未成長卵子保存の目的から,卵巣組織の凍結保存の検討を行った. 卵巣組織を採取後,解離細胞を調製し幹細胞類縁培地にて未成長卵子の体外培養を行った.未成長卵子は最大3週間前後の培養維持が可能であった. CMV-Venus発現カセットを組み込んだレンチウィルスベクターにより遺伝子導入を行ったところ,導入後5-7日で緑色蛍光の発現が認められた. 一部の卵巣組織はガラス化法にて凍結保存し,融解後に損傷度の評価を行った.コメットアッセイによるゲノム損傷度は非凍結,凍結融解の間で有為な差は認められず,凍結保護物質無添加による凍結融解と比較して著しく損傷度は低下した.超微構造観察では成長卵子において小胞体の損傷が観察され,胞状卵胞内卵子の場合は損傷を受けやすいことが明らかとなった. 以上の結果から,コモンマーモセット由来の未成長卵子は,少なくとも一定期間の培養維持および遺伝子導入が可能であること,また,卵巣組織を比較的損傷度の低い状態でガラス化保存することが可能であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の結果より,未成長卵子の体外培養および遺伝子導入が可能であることが明らかとなったが,実験対象が霊長類であるため,24年度の実験では倫理上の観点から卵巣利用の頻度および時期が不定期であった.このため,卵巣組織を凍結保存し有効利用するための検討を加え,実験計画の修正を行った.目的を達成するため上記のような一部計画の変更はあったが,未成長卵子への遺伝子導入という目的は達成しており,おおむね順調と言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後については,免疫不全マウスへの異種移植により正着および成長可能か検討する予定であるが,遺伝子導入未成長卵子の成長を達成するため,ストックした凍結保存卵巣組織も材料として活用する必要がある.また,ホスト動物への卵巣注入ではなく,遺伝子導入未成長卵子を注入したマーモセット卵巣組織の移植または再構成卵巣組織の移植を行う等,計画の一部修正により検討を進める必要があると思われる.
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度における研究費使用計画は,ほぼ当初の予定通り順調に推移したが,当初の計画から計算して若干(42,645円)の未使用資金が生じた.25年度においては本採択課題の研究最終年度であるため,25年度の研究計画の中で使用する予定である.
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