研究課題/領域番号 |
24700447
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研究機関 | 松江工業高等専門学校 |
研究代表者 |
青代 敏行 松江工業高等専門学校, 電子制御工学科, 助教 (40571849)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 手術機器 / 人工心臓 / 生体接合 |
研究概要 |
人工心臓装着手術は縫合によって行われているため,人工心臓脱血管と心臓の装着部分からの細菌侵入が問題となっている.熱・圧力の複合低エネルギによる金属と生体組織接合技術を用い,細菌侵入の阻止可能な人工心臓脱血管を開発する.脱血管は,真空ポンプによる陰圧で心臓と脱血管接合面に圧力を発生させる機構,脱血管に巻きつけたニクロム線による加熱機構を組込むものにした.平成24年度は心臓物性値の取得,構造解析,試作型脱血管の接合強度評価から脱血管形状の最適化を図った. 対象心臓は,ヒト生体組織と類似しているブタ心臓とし,物性値は脱血管が挿入される周辺部位におけるヤング率,ポアソン比とした.ブタ心臓専用の引張試験機を新たに構築し,物性値は引張試験より取得した.引張試験結果より,ブタ心臓の応力-ひずみ線図は非線形性を示し,ヤング率は低応力域0.036MPa,高応力域0.189MPaであり,ポアソン比は0.336であることが分かった. 心臓と脱血管接合部を加熱できるよう,PWMアンプを用いた加熱制御システムを構築し,試作した.室温25℃から心臓と脱血管接合に必要な温度80~100℃に加熱した際,60秒で目標温度に達し,温度が安定したことを確認した.また,接合部に安定した圧力を発生させるために,真空ポンプの選定,レギュレータの製作を行い,圧力発生システムを構築した. 真空ポンプの陰圧で脱血管と心臓接合面に効率よく圧力を発生させるための脱血管形状は,取得した物性値をもとに,材料の非線形性を考慮した構造解析より決定した.脱血管表面に長さ2.5mmの溝を2つ設けた形状が最も高い圧力が広範囲にわたって分布することが分かった.決定した形状の脱血管を生体適合性に優れるステンレスSUS316Lで試作した.ブタ心臓に対して,接合実験を行った.試作した脱血管はブタ心臓と接合可能であり,40Nの接合強度が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的「心臓の材料特性取得,自己接合に最適な脱血管形状の決定」,「人工心臓脱血管と心臓の接合性能・最近侵入度合評価」を達成するために,ブタ心臓を用いた引張試験からヤング率・ポアソン比の材料特性を取得し,構造解析より脱血管形状を検討した.そして,ブタ心臓に対して試作型脱血管の接合実験を行い,高い接合強度が得られた.今後,動物実験などから細菌侵入度合の評価を行う予定である.このことから,本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
心臓と脱血管の接合後に体内に熱電対が残らないように熱電対を使用しない温度制御方法,制御システムを構築する.また,動物実験用として,新たに脱血管を設計製作する.そして,本研究のアドバイザである医師から操作性に対する助言をいただく.そして,自己接合型脱血管の長期にわたる性能評価を実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は,動物実験用の脱血管を試作するための機械部品,材料,加熱制御システムの開発に必要な電気電子部品,脱血管と接合した心臓の病理検査試薬などの消耗品費として主に使用する.また,研究成果の発表としての学会参加,研究打ち合わせのための旅費,論文発表に必要な費用として使用する.
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