研究課題/領域番号 |
24700458
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
舩本 誠一 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40609947)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 組織工学 |
研究概要 |
小口径人工血管は、心臓血管領域など広い分野で必要とされているが、早期血栓形成、血管狭窄および内皮化の遅延による低開存性により、臨床上において満足できる小口径人工血管は存在しない。本年度は本研究で血液・血管内皮細胞との関連性を明らかにするための材料作成として、様々な処理を行った脱細胞化血管を作製し、その基礎評価を行った。 界面活性剤法による脱細胞化として、デオキシコール酸ナトリウムとポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル及びそれぞれの複合化法を用いた。脱細胞化評価として、組織内残存DNA定量、組織学的評価および走査型電子顕微鏡(SEM)を行い、脱細胞化処理による組織構造変化について検討した。組織学的評価・DNA定量より、良好な組織からの細胞除去が認められた。EVG染色による細胞外マトリクス構造評価から、界面活性剤処理後の頸動脈には、エラスチンの損傷が認められた。処理後の血管内腔表面の基底膜損傷がSEM観察から明らかになった。加えて物理的処理方法としてブタ動脈を高静水圧法により脱細胞化し、界面活性剤と同様の評価方法を用いて高静水圧法による細胞除去を検討した。作成した脱細胞化動脈のSEM観察から、脱細胞動脈は、血管内腔の基底膜様構造、内弾性板などの血管構造を維持していることが明らかになった。力学的特性評価として、破裂圧試験を行った。未処理動脈との大きな差は見られず、脱細胞化処理による力学的特性の変化を抑制することが可能であった。 脱細胞化方法は各国で種々の方法により行われており、ゴールデンスタンダートはまだない。次年度の検討として抗血栓に特化した脱細胞化血管に最適な条件を検討しかつ解析をすることで、抗血栓性に有効な構造等を解析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画として、欧米各国で行われている既存の界面活性剤による脱細胞化処理方法及び物理的な方法である高圧処理による脱細胞化方法を用いて、それぞれ特徴のある脱細胞化血管の作製を行うことを目的とし、今年度は種々の脱細胞化血管が調整できた。加えて次年度からはこれらの種々の脱細胞化血管を用いて抗血栓性に関する評価を行うための材料の作製を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
既存の脱細胞化処理方法を用いた脱細胞化血管の効果を比較検討するため、血管内腔を熱や酵素などを用いて処理し、内腔構造破壊モデルを作製し、構造解析を行っていく予定である。加えて、内面構造を明らかとした血管内腔表面に血液を滴下し、血液と血管内腔構造との関係性を検討する。血栓形成メカニズムにおいては、これまでにも報告があることから、一定の成果はあられると予想している。また、代表者が経験しているこれまでの移植結果より、移植後の早期血栓形成が起りにくく加えて細胞接着が進行していく血管の再生メカニズム解明のため、各処理血管内腔に血液を滴下し、所定時間後に血栓形成を評価することも行う。また、血液滴下後の血管内腔表面を電子顕微鏡観察し、血小板接着などの微細評価を行う。 これらの事が生体内でも整合性があるか確認を行うために、動物実験を行うためのモデル作成も今後行っていきたいと考えているので、動物に対しての麻酔や脱細胞化血管の移植部位などに関する検討も行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、初年度と同様に、ブタ組織の処理費用および解析に関しての費用を計上した。加えて血液適合性実験のために必要な採血を行うラット等の動物を購入費として計上した。申請時の計画とは異なる費用計上としては、種々の脱細胞化組織を作製することは可能となったが、生体試料があるゆえに、長期の保存ができない。その事が解析を行うための問題であると考えており、作製した試料を有効に用いるために、試料の保存方法を改善したいと考えている。初年度に病理切片作のための装置の購入を検討していたが、研究協力者の東京医科歯科大学の施設を好意により利用でき病理切片を作製できたので、この費用を試料保存のための装置システム構築のための機器購入に充て、解析に必要な試料数を増やしていきたいと考えている。
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