研究概要 |
蛋白結合尿毒素(Protein Binding Toxin, PBTx)の多くは、それ自身は小分子であるがアルブミンなどの血中タンパク質と結合することで大分子物質として存在する。そのため,通常の血液透析では除去が困難であり、透析患者や慢性腎臓病患者では血中濃度が健常人の数十倍もの高値となっているだけでなく、種々の病態への関与も明らかとなっている。本研究では、比較的簡便な操作によりPBTxを分離・除去するシステムの構築を目的とした。 初年度の成果により、希釈効果やpH変化などによりアルブミンからのPBTx解離を促進することは確認できたものの、十分に解離させるまでに時間を要することが示唆され、これらの効果を実際の臨床条件に応用することは困難であると考えられた。そこで、最終年度はPBTxと結合したアルブミンごと取り除き、喪失した分を補充するような治療モードの評価を行った。具体的には、孔径の異なる二種類の選択的血漿分離膜を用い血液透析条件における溶質除去特性について評価した。その結果、純水濾過係数およびクレアチニン、ビタミンB12およびβ2-マイクログロブリンのクリアランスは透析器に比して低値となるものの、アルブミン漏出は多くなるため、治療条件によっては通常透析よりも効率的な蛋白結合性毒素の除去が可能であると推測された。
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