研究課題/領域番号 |
24700468
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小阪 亮 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (10415680)
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キーワード | 人工心臓 / 動圧軸受 / 軸受隙間 / 溶血 / 血液ポンプ |
研究概要 |
本課題では、血液自身を潤滑液として非接触浮上回転する長期耐久性と血液適合性に優れた体外循環用動圧浮上遠心血液ポンプを研究開発している。本年度は、スラスト動圧軸受の数値流体(CFD)解析と、スラスト動圧軸受の溝形状を最適化した。 1 CFDソフトウェアの開発:スラスト動圧軸受の発生力を求めるため、潤滑理論における2次元レイノルズ方程式を元にした、独自のCFDソフトウェアを開発した。本ソフトウェアを用いて、スラスト軸受の最適な溝形状を検討した。評価モデルとして、動圧溝がインペラ外周から内周へ縮小するモデル、動圧溝と山の部分が等しいモデル、動圧溝が拡大するモデルの3種類の溝形状を評価した。本解析の結果、インペラ外周から内周へ縮小するモデルで、動圧軸受の発生力が最も大きいことがわかった。一方、動圧溝が拡大するモデルでは動圧軸受の発生力が負となることがわかった。 2 スラスト軸受隙間の計測試験:解析結果の妥当性を検討するため、スラスト軸受隙間の計測試験を実施した。試験では、レーザー変位計を用いて、ポンプ内部のインペラの浮上距離を非接触で計測した。本試験の結果、軸受隙間は、動圧溝がインペラ外周から内周へ縮小するモデルで90μm、動圧溝と山の部分が等しいモデルで26μmとなった。一方、動圧溝が拡大するモデルは、インペラがケーシングに接触した。 3 溶血試験:スラスト軸受の軸受隙間と溶血との関係を求めるため、牛血を用いた溶血試験を実施した。本試験の結果、動圧溝がインペラ外周から内周へ縮小するモデルで最も溶血が少なく、市販ポンプ比の0.6倍の溶血であった。 本研究結果から、スラスト軸受の動圧溝形状を最適化することで、スラスト軸受隙間が広がり、溶血特性が改善できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度のラジアル動圧軸受の形状解析ソフトウェアの開発に続き、平成25年度はスラスト動圧軸受の形状解析ソフトウェアを開発し、解析結果の妥当性を確認することが出来た。本ソフトウェアを用いて、スラスト方向に作用する力を釣り合わせることで、溶血に問題のない軸受隙間を実現し、溶血試験において優れた溶血特性(市販ポンプの約半分)を確認することが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、これまでのラジアル軸受の最適形状とスラスト軸受の最適形状を組み合わせることで、動物実験にも適用可能な人工心臓を試作予定である。そして、溶血試験と血栓試験を実施して、血液適合性に問題ないことを確認した後、動物実験を実施予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に血液評価評価用のポンプハウジングを試作する予定であったが、動圧軸受の最適形状を決定するために予定よりも時間がかかったため、次年度使用額が生じた。 平成26年度に、動物実験へも適用可能な、最適形状を有するラジアル軸受とスラスト軸受を用いたポンプハウジングを試作する予定である。
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