研究実績の概要 |
本課題では、血液自身を潤滑液として非接触浮上回転する長期耐久性と血液適合性に優れた体外循環用動圧浮上遠心血液ポンプを研究開発している。平成26年度は、動物実験に適用可能なモデルの実現を目指し、軸受剛性と溶血特性に優れたラジアル軸受隙間に関する検討を行った。 1. ラジアル軸受隙間の評価モデル:軸受剛性と溶血特性に優れたラジアル軸受隙間を検討するため、円弧数が4つ,溝深さが100 μmで,半径隙間が20, 30, 40, 80, 90, 100, 180, 250 μmと異なる8種類の多円弧軸受を有する評価モデルを製作した。 2. ラジアル安定性評価試験:インペラの安定性を評価するため、インペラのラジアル運動計測試験を実施した.試験では、2つのレーザー変位計の計測値から,インペラ中心座標を算出し、公転半径が半径隙間の10 %以下となるとき,インペラの振れ回りは十分小さいものとした。評価試験を実施した結果、ラジアル半径隙間が100 μm以下でインペラは安定駆動することがわかった。 3. 牛血を用いた溶血試験:ラジアル軸受隙間と溶血特性の関係を評価するため、牛血を用いた溶血試験を実施した。その結果、インペラが安定するラジアル軸受の半径隙間を100 μm以下にすると、インペラは安定駆動するため、溶血特性は改善することがわかった。しかし、ラジアル軸受の半径隙間を30 μmから20 μmに減少させると、最大せん断応力が、溶血が生じる300 Paを超えるため、溶血は大幅に増加することがわかった。 本結果より、開発した血液ポンプでは、ラジアル軸受隙間は30 μmから100 μmの間に設計すると、ラジアル軸受の軸受剛性と溶血特性に優れた血液ポンプを実現できることがわかった。
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