研究課題
昨年度までに,ヒス束終端からプルキンエ線維網を介して心室筋に至る部分の興奮伝播様式を再現するために,プルキンエネットワークの解剖学的構造を単純化し2次元格子状の経路を有する伝導モデルをコンピュータ上に構築した.近年の研究で細胞間結合であるCx40の変異が進行性の致死性不整脈を有する患者から見つかっていることから,平成26年度は変異による細胞間の電気的結合力の低下と不整脈の誘発性との関係に着目した実験を行った.実験の結果,電気的結合力を低下させた条件下においては,通常の興奮伝導ではみられない心室からプルキンエ線維網への興奮伝導の流入や,プルキンエ線維網と心室を旋回経路とする旋回性興奮が発生した.またアブレーション治療を模擬するように格子状の経路の一部を遮断すると,旋回性興奮は持続しなかった.これらのことから,プルキンエ線維網の構造と細胞間の電気的結合は不整脈発生の要因であり,また旋回経路を対象としたアブレーション治療が有効であることが示唆された.2次元格子モデルに加えて3次元構造モデルによる予備的実験も行った.合わせて,病理組織標本デジタル画像から心臓刺激伝導系の3次元可視化における表現手法の改善を行った.連続切片組織標本に対して位置合わせとセグメンテーションを行い,それらを積み上げたボリュームデータに対して,Poisson Surface Reconstruction法を適用することにより,表示品質・再現性と操作性を両立することができた.
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PLOS ONE
巻: 9 ページ: e109271