今年度(最終年度)は、マウスiPS細胞の神経分化に成功した前年度の結果を受けて、未分化細胞除去用ベクターを感染させたマウスiPS細胞を神経分化させ、ベクターの持続感染の有無を確認した。その結果、Tuj1陽性の神経細胞からはベクターが除去され、未分化な細胞にはベクターが持続感染していることが確認された。 次に、上記の結果から、ベクターに搭載されている自殺遺伝子(P450遺伝子)の機能を利用して、ベクターが感染している未分化細胞を除去することを試みた。その結果、ベクター感染細胞が自殺遺伝子の機能によって死滅したことが確認されたが、それと同時に、分化した神経細胞の死滅も確認された。これは、神経分化の方法として胚葉体から分化させる方法を用いたため、神経細胞は未分化細胞の塊である胚葉体が死滅した影響を受けてしまったと考えられた。 以上の結果から、研究期間全体では、我々独自の自動除去ベクターを用いて、神経分化した細胞からはベクターが自動的に除去され、未分化な細胞ではベクターの感染を持続させることに成功した。しかし、最終目標である分化細胞の選択に関しては、未分化細胞の除去に巻き込まれる形で神経細胞も死滅してしまったことから、本研究を完結させるために、今後は、胚葉体形成とは異なる分化方法を試して、未分化細胞の選択的除去を実現したいと考えている。
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