研究課題
平成24年度は、これまでに明らかとなっているNano-PICsomeの「物質透過性を示すPIC膜」と「EPR効果による腫瘍集積性」といった特徴を活かした酵素プロドラッグ療法用キャリアの構築と固形腫瘍における酵素反応について検討を行った。まず酵素(β-Galactosidase: βGAL)を封入した架橋Nano-PICsomeの調製に成功し、In vitroレベルでの酵素ー基質反応を速度論的に解析した所、生の酵素と比べ、Vmax, Km値も大きな差がない事が確認された。これらの結果はNano-PICsome内に酵素が失活することなく封入されていることを支持する結果である。このようなβGAL封入Nano-PICsomeを、マウスの大腸がんであるC26を皮下移植した担がんマウスに尾静脈投与し、96時間後に基質(HMDER-βGal: 酵素反応後に蛍光を示す)を投与し、In vivoリアルタイム共焦点顕微鏡、In vivoイメージングシステム、蛍光顕微鏡などを用いて観察したところ、腫瘍組織内においてのみ酵素反応が生じる事が明らかになった。これは、プロドラッグのモデルである基質は低分子であるために全身へ拡散するが、EPR効果によって酵素封入Nano-PICsomeが集積した腫瘍でのみ酵素ー基質反応が生じた為である。一連の現象は、これまでにコンセプトとしてはあったが、実際にIn vivoで機能した報告例はなく、申請者が「PICsomeが生体内で酵素反応を引き起こす最適な反応場になりうる」といった提案を強く支持する結果である。現在は、プロドラッグのモデルではなく、実際に臨床に進んでいる薬剤のプロドラッグを用いて、抗腫瘍効果について検討を行っている。
1: 当初の計画以上に進展している
申請書では、本研究の「Proof of Concept」が24年度の達成課題であったが、それを達成した上で、実際の抗がん剤をしようした抗腫瘍効果の検討まで進めているため。
平成24年度では固形腫瘍においてPICsomeが酵素プロドラッグ療法の反応場として最適であることを明らかにした。平成25年度では、引き続き抗腫瘍効果の検討を進めると同時に、PICsomeのもう一つの特徴である「長期血中循環型キャリア」といった特徴を活かした血流中での酵素反応について検討を行う。具体的には急性白血病モデルのマウスを用いて疾患の治療を試みる。
該当なし
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (38件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
Journal of the American Chemical Society
巻: 135 ページ: 1423-1429
10.1021/ja3096587
ACS Nano
巻: 6 ページ: 6693-6705
DOI: 10.1021/nn301164a
巻: 134 ページ: 13172-13175
DOI: 10.1021/ja304615y
http://www.bmw.t.u-tokyo.ac.jp
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/nanobiof/index.html