研究課題/領域番号 |
24700477
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
徐 知勲 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (20611544)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歯科材料 |
研究概要 |
本研究の目的は、歯科矯正用補綴材の可逆的な装着のための新規光応答型分解性高分子接着レジンの開発である。従来の接着レジンは機械的強度と強い接着力を目指して設計されてきたものの、分解性がないために使用後の補綴材の除去が困難である。こうした問題を解決するため、光応答型分解性リンカーを有する新規接着性モノマーの提案を目指して研究を進んでいる。前年度の研究では接着性成分を有した新規光分解型接着性モノマーの合成から始めた。メタクリロイルクロリドと4-(4-(1-hydroxyethyl)-2- methoxy-5-nitrophenoxy) butyric acid (HMNA)を合成させ、光応答型分解性メタクリレートモノマーの合成に成功し、その合成及び精製法を確立した。その次、アゾビスイソブチロニトリルを用いて合成されたモノマーをラジカル重合させることで、モノマーのポリマーへの重合能力を確かめた。その結果光分解性ニトロペニル基を有するポリマーの重合が確認できた。得られた光分解性ポリマーに365nm波長の紫外線を5分間与えた後、ニトロペニル基のNMRピークを解析した。その結果30%程度の官能基の分解が見られ、合成されたポリマーの光分解特性が確認できた。 光分解性モノマーの末端カルボキシ基を接着性官能基を有するドーパミンとカルボジイミドを媒介にカップリングさせる合成条件の検討を行った。NMRで光分解性性モノマーの80%程度に接着性ドーパミンの導入が認められ、目的とした光分解型接着性モノマーの設計をほぼ完成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光分解型新規接着性モノマーの合成ルートを確保し、次の重合能力及び物性評価のステージに進む段階である。ドーパミンのカテコール基は反応途中非常に酸化しやすく、光分解性モノマーも遅いながらも自然光で分解する特性を有しているため合成条件の検討でやや遅れが生じたものの、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
合成された接着性モノマーと架橋剤を市販の粒径10μm程度のシリカフィラーと有機溶媒中で混合させ、カンファーキノンを開始剤としたラジカル重合を行い、接着レジンの硬化特性を評価する。具体的には、接着レジンの組成及び濃度による引っ張り試験とヤング率の変化などを調べ、市販の接着レジンと比較することで、レジン硬化の最適化を行う。必要に応じて、シリカフィラー粒径の変更やPEG架橋剤の分子量の調節などを通じて、接着レジンの機械的特性の最適化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
光分解型接着性モノマーとPEG架橋剤の合成に必要な試薬、有機溶媒及び触媒購買への支出と触媒の購入が必要と予想される。更には、合成に必要なガラス器具と合成の評価のための測定装置への消耗品に関する経費が支出されると予想される。 合成後の物性評価に必要な消耗品及び装置の購入が必要とされる。具体的には接着レジンの強度及び分解性評価のための引っ張り試験機の維持管理費用や紫外線照射機器の購入が必要とされる。合成された新規接着剤の細胞毒性の評価を行うため、細胞培養に必要なプラスチック消耗品及び培養溶液、細胞毒性テストキットなどの購入が必要とされる。
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