研究課題/領域番号 |
24700478
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
南 広祐 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (70447499)
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キーワード | コラーゲン / グルコサミノグリカン / 複合化 / 繊維化 |
研究概要 |
平成24年度ではコラーゲンの配向と複合化の可能性に集中して実験を行った。平成25年度では、組織体作製の基礎研究とともに実際組織体のプロトタイプを作製した。生体組織はコラーゲンとグルコサミノグリカン、そしてエラスチンなどの複合体であることに着目してコラーゲンをベースとしたコラーゲン複合体を作製することを目的とした。しかし、今までのコラーゲン複合体はコラーゲンゲルに基づいたものであり、コラーゲン多空体を作製に集中されていたものの、私は、生体組織に近い組織体を作製するため、コラーゲン繊維化・ゲル化・複合化の三つの要素を全て取り入れた新概念の組織体の作製に臨んだ。コラーゲンとの複合化のためにグリコサミノグリカンの中でヒヤルロン酸(HA)、コンドロイチン硫酸(CS)、ヘパリン(Hep)を使用した。その結果、繊維化コラーゲン複合体内でのグリコサミノグリカン量の調整が可能となり、軟組織、その中でも真皮と同様な濃度を有する組織体の作製ができた。現在、機械的物性を補うため、エラスチンをこのコラーゲン複合体に入れ、架橋することで軟組織と同様の成分を有するコラーゲン組織体を作製している。 一方、多層構造コラーゲン構造体を実現するため、繊維化されたコラーゲン粒子を作製して細胞の足場としての応用を試みた。これは、コラーゲン組織体の特徴であるもので、コラーゲン組織体内への細胞浸潤が遅いことに起因する。即ち、繊維化されたコラーゲン粒子を作製し、これを細胞培養のための足場として使用することにより高効率の3次元培養が可能になると考えられる。繊維化コラーゲン粒子は界面活性剤を用いて油-水系の中で作製しており、水溶液で安定性を有する繊維化コラーゲン粒子を得ることに成功した。現在、この繊維化コラーゲン粒子を利用して生物学的検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の達成目標として1)コラーゲン繊維の方向性、2)コラーゲンとグリコサミノグリカンおよびエラスチンなどの第2成分との複合化、3)多層構造コラーゲン構造体の開発など3つを設定した。平成25年度では、上に記した目標の中で2)と3)の達成するための研究を進めていた。コラーゲンとグリコサミノグリカンおよびエラスチンなどの第2成分との複合化の場合、私は、複合体内でのグリコサミノグリカンの正確な濃度の計算に成功し、濃度制御にも成功した。また、グリコサミノグリカンの複合化がコラーゲン複合体の安定化に貢献することを見出した。しかし、複合化挙動はグルコサミノグリカンの種類により異なり、HAとCSの場合、コラーゲンとの繊維状複合化が上手に行われたものの、ヘパリンはゲル化することが分かった。また、これらの複合体はコラーゲン濃度に依存することが確認された。これは生体組織と同様な物理的・生物学的特性に近い組織体を作製するために非常に大事な知識である。現在、コラーゲン・グルコサミノグリカン・エラスチンの3相で構成された複合体の作製を行っている。一方、多層構造コラーゲン構造体を実現するため行った繊維化コラーゲン粒子の場合、界面活性剤のHLB値を調整することにより様々な特性を有するコラーゲン粒子と繊維化コラーゲン粒子を得ることに成功した。繊維化されたコラーゲン粒子の場合、生体組織の同様のミクロ構造を有することが分かった。また、架橋剤を使用していないのにもかかわらず、水溶液中で安定していることを確認した。私は、この繊維化コラーゲン粒子を用いて3次元培養を行う予定である。コラーゲン組織体の最大の難関は細胞浸潤る。この繊維化コラーゲン粒子を使用し、細胞との多層構造体(multiple layer strutcure created by layer-by-layer method)本格的に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年に続き、コラーゲン、クリコサミノグリカンなどの薬品の購入が必要である。これらは、複合組織の作製に必要はものである。また、エラスチンなど生体組織を構成する因子を購入し、複合化を試みる。また、架橋剤などの化学薬品藻必要である。また、繊維化コラーゲン粒子を作製するための薬品の購入を行う。表面観察(AFM, SEMなど)と物理的特性の測定のための消耗品を購入する。これは、生体組織のミクロ構造まで模倣する必要もあるからである。これらを用いて計画通り生体類似組織体を作製し、その物理的特性の評価を行う。 今年度からは細胞実験と動物実験に必要な生化学試薬と培養器具、そして動物を購入する計画である。特に、細胞培養実験から、細胞とコラーゲン組織体間相互作用について様々なデータを習得する予定であるため、細胞培養に必要な物品の購入は必修である。具体的には、作製された生体類似組織体のミクロ構造および物理的特性と生物学的特性間関連性を詳しく検討することで、組織体の機能評価と生体内での移植に必要な情報を蓄積する。動物実験を場合、本大学で設置された設けられた委員会の規定に従って行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
事務の手続き上、2014年度4月払いになった。 9,926円は物品(消耗品)に該当するものである。
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