本研究では、コラーゲン繊維とポリマーの複合体を作製することにより組織工学および再生医療分野で使用可能な新規バイオマテリアルを完成することを目的とした。コラーゲン分子の構造制御を行うことにより多糖類などの第2成分を複合化するとともに、コラーゲン繊維構造作製・制御やコラーゲンの高密度化を行うことでより生体組織に近い人工組織の作製に臨んだ。 コラーゲンとの複合化のためにグリコサミノグリカンの中でヒヤルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリンを使用した。グリコサミノグリカンは細胞の生着及び増殖の促進、免疫機能の調節、にとても重要な役割を果たしている。これらのグリコサミノグリカンをコラーゲンと生理条件で複合化し、繊維化した結果、グリコサミノグリカンの比率を調節したラーゲン繊維複合体の作製に成功した。 一方、今まではコラーゲンの濃度を2wt%以下で調節する必要があるので、低濃度コラーゲン組織体の機械的な特性は低い。この問題を解決するため、申請者はコラーゲン組織体のコラーゲン濃度を生体組織と同様の30wt%まで上昇させることにした。方法として、コラーゲン水溶液を透析させながら繊維化/ゲル化させた。その結果、30wt%のコラーゲン組織体の作製が可能となり、高機械的な物性を示していることが分かった。 また、多層構造コラーゲン構造体を実現するため、コラーゲン繊維型粒子を作製して細胞の足場としての応用を試みた。コラーゲン組織体内への細胞浸潤が遅いので、繊維化されたコラーゲン粒子を作製し、これを細胞培養のための足場として使用することにより高効率の3次元培養が可能になると考えられる。実験結果、コラーゲン繊維型粒子は生理条件で自己組織化し、細胞を含んだ大きな組織体になることを見出した。これは、細胞の3次元培養が可能になることを意味し、将来的に組織の再構築に応用可能であることを示唆する。
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