薬物や抗原をターゲット細胞に効率的に送達するデリバリーシステムの構築を目的として、高分子ナノ粒子やリポソームなどの球状キャリアの開発が活発に進められてきた。一方で近年、キャリアの形態は①体内動態、②細胞による取り込み、③細胞内での局在などに影響を与える重要な因子であることが明らかとされ、球状のみならず異方性形態を持つナノ構造体がDDSキャリアとして注目されている。しかし、その報告例は少なく、形態とキャリア機能との相関に関する知見はまだ十分に蓄積されていない。 我々は、①高いアスペクト比、②設計の自在性および③生体適合性を有する点に着目し、ベータ-シートペプチドの自己組織化により形成するペプチドナノファイバーを異方性キャリアとして選択した。本研究では、ナノファイバーの形態に基づく新規なDDSキャリア機能を探索するとともに、その得られた知見を基にした新規な抗原デリバリーシステムを開発することを目的とした。具体的には、ベータシートナノファイバーの構造を精密に制御し、その形態や構造の違いが抗原提示細胞との相互作用 (取り込み機構や細胞内動態) に与える影響について詳細な評価を行った。特に本年度は、線維長の異なるナノファイバーを作製し、線維長が細胞取り込みに与える影響を評価した。
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