研究課題
本研究計画の目的は、金ナノ粒子による表面増強ラマン散乱(Surface Enhanced Raman Scattering : SERS)効果を用いることで炎症反応の高速モニタリングを実現することである。過度の炎症は多くの病気の原因となるため、病気の早期発見による予防が有効であり重要である。近年、病気の診断にはバイオマーカーが極めて有効であることがわかってきた。炎症を起こした細胞内での炎症バイオマーカーも重要なファクターであり、病気の早期発見のためにバイオマーカーの検出は効果的である。金ナノ粒子は、生体応用を含む多くの分野で応用が進められている。例えば、金ナノ粒子は抗体などをリガンドとして表面修飾することが可能であり、リガンドの反応特異性により、標的分子に特異的に金ナノ粒子を結合することができる。さらに、金ナノ粒子を用いることで、in vitroでの癌の検出や薬剤とタンパク質の相互作用の検出に用いられるラマンシグナルを増幅することが可能となる。そのため、SERS-金ナノ粒子は、標的分子を検出・計測することができる特徴がある。本研究では抗体修飾した金ナノ粒子を用いて、モデル細胞内に誘起された炎症によるバイオマーカーの生成を、金ナノ粒子によるSERS効果を利用することによって高感度で検出を行う。これにより免疫反応の初期段階を検出する手法を確立する。この研究の成果は、病気の予防・早期発見のために非常に有効な手法として期待される。
2: おおむね順調に進展している
本年度(2012年度)においては、in vitroで炎症反応を検知するために、特定の標的分子を修飾した金ナノ粒子を作製した。そして、ラマン分光測定によってその評価を行った。さらに、炎症反応効率を比較するために、ロッド状の金ナノ粒子(金ナノロッド)を作製した。金ナノロッドを用いた炎症反応に対する効果の研究報告は多くないことから、表面修飾後の金ナノロッドの炎症反応に対する効果について計測・解析を行った。In vitroで行った本研究は、SERS-金ナノロッドを用いてin vivoにおける炎症反応を計測・解析する際に有効となるであろう。この研究についてはすでにISI論文誌に投稿し受理されている。本研究によって、金ナノロッドは球状の金ナノ粒子よりも良好なラマンシグナルが得られることが分かった。しかし、炎症反応を早期発見するためにはさらに効果的にラマンシグナルを検出することが必要である。したがって、ラマンレポーターと組み合わせることによって、金ナノロッドによるラマン分光測定効率がさらに向上し、高感度な測定が可能となる。
平成25年度およびそれ以降の年度において、in vitroでの炎症反応検知効率を向上させるために、新規粒子(金ナノロッド/化学レポーター/抗体の複合体)を開発する。さらにこの粒子をラマン分光によるSERS測定のためのモデル細胞に適用する。
本研究計画の第2年目は、1,810,945円を必要とする。消耗品:ガラス器具およびプラスチック器具のために360,945円 消耗品:化学薬品、培地、生物学的試薬のために600,000円旅費:国際学会参加のために 450,000円 国内学会(東京)参加のために 100,000円人件費:Research Assistant (RA)による実験補助のために150,000円 印刷費:ポスター・論文・書籍の印刷のために 150,000円
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
Particle and Particle Systems Characterization
巻: In Press ページ: In Press
10.1002/ppsc.201200115
Nanoscale
巻: 4 ページ: 3776-3780
10.1039/C2NR30651D
Journal of Biomaterials Science, Polymer Edition
巻: 23 ページ: 2369-2380
10.1163/156856211X617722