これまでの研究から、SeVdpベクターにより、初期化4因子を体細胞に導入し、適切な時期にベクターを除去することで外来遺伝子フリーのiPS細胞が作製できることが分かっている。本研究課題では、マイクロRNAやリボザイムを利用したSeVdpベクター除去方法を検討し、外来遺伝子フリーのiPS細胞や組織特異的細胞の作製に利用できる方法の確立を目指した。 低分子化合物に応答して活性をもつリボザイムはテオフィリンに応答するものを利用した。SeVdpベクターに搭載した蛍光タンパク遺伝子の5’非翻訳領域にこのリボザイムをタンデムに組込んでフローサイトメトリーにより解析したところ、約70%の遺伝子抑制効果が得られた。SeVdpベクターを除去するために、SeVポリメラーゼ遺伝子の5’非翻訳領域へのリボザイムの組込みを試みたが、構築が困難だったため、3’非翻訳領域など別の領域にリボザイムを組込んだベクターの構築および検証を進めている。 マイクロRNAについては、遺伝子抑制効果の程度を調べるために、SeVdpベクターに搭載した蛍光タンパク遺伝子の下流に、多くの細胞で発現が高いmiR-21の標的配列を組込んだベクターを作製した。蛍光タンパクの発現を指標にし、効果を調べたところ、複数の細胞で非常に高い抑制効果が認められた。適切なマイクロRNAを選ぶことで、高い遺伝子抑制効果が得られることが分かり、体細胞から組織特異的細胞を誘導する系においても、SeVdpベクターを効率良く除去するためには、利用するマイクロRNAの選択が非常に重要であることが示唆された。
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