研究課題/領域番号 |
24700491
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田倉 哲也 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00551912)
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キーワード | 磁界共鳴 / ハイパーサーミア / リッツ線 |
研究概要 |
平成25年度においては,MHz帯の電磁界を利用する磁界共鳴方式に合わせたインプラント型ハイパーサーミア用励磁装置に関して,高効率な高周波外部磁界発生装置を実現するべく,素線径・より本数・素線配置の観点からリッツ線の選択方針について検討を行った.リッツ線の構成要素として,線材,素線径,より本数等が考えられる.その関係を明確にするために,導線の近接効果および表皮効果による抵抗を理論的に導出し,それを反映させた数値解析プログラムを用いて,リッツ線構成とQ値に関する特性の評価を行った.得られたQ値の周波数特性より,周波数によって適したリッツ線構成が異なることを把握することができた. 次に,コイル形状について検討をおこなった.コイルの種類としては,スパイラルコイルを選択し,内外径比と巻線部分におけるアンペアターンに注目し,サイズの小型化に関する検討を,有限要素電磁界シミュレータを用いて解析を行った.必要なアンペアターンと,そのときのコイル端電圧の関係から加温に必要な励磁条件とコイル形状の関係を明確にすることができた.また,解析によって得られたコイルを励磁するためのマッチング回路についても検討を行ったところ,コイルに対して力率改善のために直列接続されたコンデンサにさらに並列にコンデンサを接続することで,力率改善とインピーダンスの調整を同時に実現できるため,本装置に有効であることを示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画した平成25年度の実施計画における2つの課題(高効率な高周波外部磁界発生装置の設計・開発および装置周囲の電磁界分布の評価)を満足するべく研究を進めてきた.臨床を想定したコイルを設計し,それを組み込んだ外部磁界発生装置からの電磁界分布の解析および計測を行い,ICNIRPガイドラインとの比較を行うことで治療を受ける人だけでなくその周囲の人々への影響を評価する予定であったが,検討を行ってきた外部磁界発生装置の想定患部(特に深部)における出力が治療効果の高い磁束密度を得ることが困難であることが解析結果より判明したため,電磁界分布に関して十分な評価が行えなかった. 以上より,コイルの線材や形状の設計指針や,コイルを励磁するためのマッチング回路に関しては道筋をつけることが可能となったが,臨床を想定した装置の開発には至らなかったため,磁界発生装置の電磁界分布を十分に評価することができなかったので,達成度としては遅れている.そこで,達成できなかった点を補完するために,研究期間の延長申請を行った.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度において,達成できなかった点を補完するために,今年度に引き続き高効率な高周波外部磁界発生装置の設計・開発と,そこから出る電磁界の人体への影響について解析・調査を行う.まずは高周波外部磁界発生装置について,外部磁界発生装置に磁性材料を利用した場合の検討を取り入れる.磁性材料は,磁束を効果的に集めることができるため,空心の場合と比較してインダクタンスを大きくすることができる.そのため,同じアンペアターンでも,患部の磁束密度を改善することが可能になる.ただし,インダクタンスの上昇とともにコイル端電圧が上昇するため,絶縁破壊について十分な検証も必要である.そこで,有限要素電磁界シミュレータを利用し,磁性材料を利用したときの患部磁束密度とコイル端電圧の関係を明らかにし,臨床での使用が見通せる高周波外部磁界発生装置の開発を行う.また,コイルの種類はスパイラルとしていたが,様々な種類のコイルを励磁装置の検討に取り入れることで,深部励磁に適したコイルを明らかにする. 次に,今年度に十分達成できなかった,ICNIRPガイドラインの参考レベルとの比較検討を行うことで,本システムの人体に与える影響を調査する.尚,平成26年度は得られた結果がまとまり次第,順次成果の発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
計画を変更し出力を確保するべく,研究期間を延長して,外部磁界発生装置へ磁性材料を追加した解析を行うこととしたため,未使用額が生じた. 外部磁界発生装置へ磁性材料を追加した解析と学会での発表を次年度に行うこととし,未使用額はその経費に充てることとする.
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