研究課題/領域番号 |
24700497
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
森廣 雄介 山口大学, 医学部, 特別医学研究員 (80448282)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 局所脳冷却 / ネコ / サル / てんかん / 埋込みデバイス / ペルチエ素子 / 体内埋め込み |
研究概要 |
サル用の冷却システムの開発に取り掛かるため、ネコ用冷却システムの改善をはじめに実施した。ネコ用の局所脳冷却システムはすでに試作品があるため、ネコを用いた実験を実施することで、ペニシリンGによるてんかん性異常脳波に対する発作抑制効果や、長期間の冷却による影響を検討した。また、予備的研究として、てんかん焦点切除術施行時に硬膜上からの切除予定部位の冷却を実施することで、硬膜の有無による冷却性能への影響を調べた。 結果として、ネコ用の冷却デバイスに使用しているペルチェ素子のパワーでは、サルの脳表を十分に冷却できない可能性が有ることが分かってきた。特に、硬膜上からの冷却を実施する場合、硬膜の厚さが硬膜下の脳表の冷却に大きな影響を与えることが確認できた。硬膜自体にも血管の走行はあるため、冷却性能の低下は起きることは想定していたが、それよりも硬膜による冷却性能の低下は深刻であることがわかった。 動物実験と並行して、発作検知システムの検討を実施した。本研究では、1)スパイク検出、2)Complex Demodulation法による高周波振動解析、3)SORネットワーク解析の3種類により検討を実施することとしていたが、ペニシリンG(PG)を用いた急性焦点に対しては、スパイク検知手法が有効であった。高周波振動に関しては、PGモデルでは、高周波成分を確認できなかった。SORネットワーク解析を用いた手法はてんかん焦点の推定には有効と見られたが、実時間成分を含む信号に対する特徴抽出能力が弱く、発作検知手法に対しては、ソフトコンピューティングとしての能力を十分発揮できないと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サルへの適用は十分可能と考えられたが、予備実験によって、冷却性能に余裕を持たせなければ、覚醒状態のサルに対する冷却抑制効果は十分に得られないと考えられた。したがって、初年度にサルへの埋め込みを実施することが出来なかった。一方で、ネコを用いた実験を綿密に実施することで、問題点を見つけることが出来たため、次年度に於いては、サルへの埋め込みを実施する。 発作検知システムについては、スパイク解析がリアルタイムに実施可能でかつ急性焦点に対しては安定した効果を発揮することが認められた。一方で、SORを用いた手法は、焦点部位の推定に関しては一定の有効性を示しているが、発作検知を行うシステムとしては難しいことが分かってきた。今後は、別のソフトコンピューティング手法を用いる。
|
今後の研究の推進方策 |
動物実験:サル用に強力なペルセデバイスを用いて、硬膜外冷却によるてんかん発作抑制効果を実験的に確認する。また、長期間の留置に対する冷却効果の変動についても検討する。 発作検知:ソフトコンピューティングによる発作検知手法として、ウェーブレットネットワーク(WN)法を用いる。WN法の利点として、少ない学習回数でGlobalMinimumの最適解を得ることができ、リアルタイム検出にも有効である可能性が高い。また、実験的につくりだすてんかん焦点は、毎回様態が異なるため、個々の動物、個々のてんかん焦点ごとにモデルを作成可能なPatient Dependent Systemの検討を行う。検出システムの検討に関しては、山口大学医学部脳神経外科と共同研究を実施している、ファジィシステム研究所の協力を仰ぐ。
|
次年度の研究費の使用計画 |
【物品費】サルを購入予定であったが、ネコを用いた追加実験が必要となったため、購入せずネコ購入の費用に当てたが、未使用額が生じた。この未使用額については、H25年度にディスポ製品・電極等・装置バッテリー交換等の消耗品の購入に充てる。
|