研究課題/領域番号 |
24700500
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
君塚 道史 宮城大学, 食産業学部, 助教 (90553446)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本 |
研究概要 |
生体の凍結保存を成功させる為には、細胞内・外における氷結晶の生成・成長の制御が重要となる。申請者はこれらを実現すべく、凍結保護剤で浸漬処理を行った細胞等をシリコンオイル等に懸濁して凍結する方法(縣濁前処理法)および、この方法で得られた縣濁物または細胞が含まれた凍結保護水溶液の微細液滴を液体窒素などの冷媒中に連続滴下して凍結する方法(微小液滴凍結法)を新たな凍結法として検討している。H24年度における各処理法の実績は以下の通り。 (縣濁前処理法)膵島をシリコンオイル中に縣濁すると、再現性よく-20~-25℃まで未凍結状態、即ち過冷却状態となる事が分かった。この過冷却状態での保存性を確認すべく、凍結保護剤等への浸漬処理をせずに縣濁処理のみを行った膵島を-10℃付近で24時間保存試験をした。結果、FDA-PI染色により得られた生存率に殆ど低下が見られなかった。一方、膵島の凍結保護剤として一定の有効性が示されているCP-1溶液に浸漬処理後、本縣濁処理を行い-70℃の低温冷凍庫で緩慢凍結すると非縣濁処理に比べ生存率が向上する結果となった。 (微小液滴凍結法)汎用的な実験器具(シリンジポンプ、シリンジ、シリンジ針)で構成される微小液滴凍結装置を試作した。送液速度、シリンジ径などの制御により、50μm~の固体粒子が任意に作製可能となった。本装置により、種々のサイズにある水溶液の固体粒子を作製し、ラマンスペクトル測定を実施した。結果、例えば200μm未満の1.5mol/kgスクロース溶液の粒子であれば、OH伸縮に由来するスペクトルはブロードとなり、氷(Ih)に由来するシャープなピークは見られなかった。よって、本装置を用いれば、微小液滴による効率的な凍結保存が可能になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度における各検討の進捗状況は以下の通り。 (縣濁前処理法)当初予定では凍結保存物質のスクリーニング、更には凍結-解凍後の生存率が高い条件について、一定期間の保存試験を行う予定であったが未着手となった。微小液滴法の進捗が良好であった為、そちらを優先させた事が主な理由。 (微小液滴凍結法)微小液滴凍結装置の試作が完了。本装置により非結晶状態にある固体粒子の連続調整が可能となった。また、当初予定には無かったが、微小液滴凍結法および装置を請求の対象とした、特許出願の準備が完了。よって、計画に比べ進捗は概ね良好と言える。
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今後の研究の推進方策 |
(縣濁前処理法)前年度に未着手となった検討箇所を試験する。また、微小液滴法と併用した場合の試験を行い、その有効性に対し見極めを行う。 (微小液滴凍結法)試作機にて実際に生物試料を縣濁させた保護水溶液の固体粒子を作製する。更に、インクジェット方式、静電分注など滴下方法の検討に加え、液滴からの伝熱を促進(例えば、対流装置の付加など)などの装置改修も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
固体粒子の状態評価に際し、顕微ラマン分光が有効である事が明らかとなった為、本装置の消耗品(アプリケーション)の拡充を計る。また、微小液滴凍結装置の改造(新たな滴下装置および冷媒対流装置)に研究費を使用する予定。
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