本申請では,使用者の操作性を考慮した手術支援ロボットの設計システムを構築することを目的とした.ロボットの自由度配置や機構の最適化を実機開発前に実施し、操作感などを工学的に捉えて要求仕様とするための検証を行った. 本年度は,前年度に実施した評価試験に引き続き,実施するタスクを追加すると共に,医師の操作したデータを用いて,ロボット鉗子先端部における設計値の最適化検討を行った.術具先端部に配置される関節間距離に応じて,その術中における作業空間の大きさに影響が生じることに加えて,作業精度にも影響が生じることが確認された.この結果からそれぞれがトレードオフの関係を有することが確認されたため,設計をする際に最適化を検討することとした. 基本とする手術手技を針掛け動作とし,ロボット鉗子先端部に配置する関節間距離を実験条件として変化させ,医師に操作してもらうことで検証を行った.結果として最適化問題として関節間距離を求めるにあたり,最適とされる解が範囲を持って求まる結果となった.本結果により関節間距離を決めるために操作性の観点から具体的な値を求めることが可能であると示唆できた.手術支援ロボットの機構として一部分への適用ではあるが,今後全ての機構においても同様の検証を行っていく.本成果の詳細については,現在論文としてまとめる作業を行っている.また,作業空間を確保するための機構を考慮した実試作機の製作を行い,動作の確認を行った.シミュレーション環境で得られている成果と比較し,その実機への適用性の検討を行った.加えて実機との比較を進めるにあたり,制御部などで生じる遅れなどの特性を検証する必要がでてくると考えているため,シミュレーションシステムにもその要素を組み込む検討を開始している. 今後は機構部・制御部・操作部から構成される系としてシミュレーションを改良し,より最適な解の検討を実施する.
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