研究課題/領域番号 |
24700509
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜医療科学大学 |
研究代表者 |
篠原 範充 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 講師 (00402222)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乳腺超音波 / 精度管理 / ファントム / 乳がん |
研究概要 |
現在、乳房超音波検診の導入に向けて,乳房超音波検診の効果についての無作為比較試験(J-START)が実施されており、近い将来、本格的に超音波装置を用いた乳がん検診の開始が期待されている.そのため,乳房超音波診断装置の精度管理は,急務となっている. これまで,乳房専用の超音波検査は,明確な精度管理方法が明示されておらず,ユーザーにその大部分が委ねられている.そのため,検査経験の浅い医師・技師にとって再現性の高い精度管理を実施することは極めて困難である.また,乳房超音波診断装置の画像劣化は,少しずつ変化が進んでいき,日常の検査中にそれらを把握することは困難である.近年,ファントムを用いた精度管理方法が提案されているが,その評価は,視覚による主観的な手法であった. そこで,本年度の研究では,客観性,再現性高くファントム画像を解析するツールを目指した.これらのツールの普及により日常的な精度管理において容易に画像計測が可能となる.開発したソフトは,汎用性を重視してMicrosoft C++およびMicrosoft C#を用いてGUI化を行った.ファントムの撮影条件(ゲイン)を6段階に変化させて画像解析を行った.また,ファントム製造会社(株)京都科学の協力を受けて,製品化されたファントム141個,精度不良なファントム6個の解析を行い,有効な結果が得られた.本研究成果は,本年度下記の論文として掲載された. 掲載論文 篠原範充:乳房超音波診断装置のためのファントム画像を用いた精度管理,日本乳癌検診学会誌,2012,21(3),232-236 篠原範充:乳房超音波診断装置専用ファントムのMassターゲット解析のための精度管理ツールの開発,日本乳癌検診学会誌,2013,印刷中.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,自作の解析ソフトを構築し,ファントムの計測を行った.現在ファントムを用いた画像評価は,目視により「内部輝度が順に変化しているか否か」を主観的に判断している.本研究では,これらの主観的評価を客観的な指標として提示することが目的である. 本手法は,①初期値の入力,②解析領域の取得,③画素値の取得の3段階からなる.①原画像上の最右の円に補助初期点を入力し,画像解析範囲と理想円の取得を行う.②取得した解析範囲に対してグレースケール化,二値化およびノイズ除去を行うことにより,解析範囲内の領域からMass領域の認識を行う.ここで用いるグレースケール化の手法には,輝度による人間の知覚の変化を考慮し,目視評価に近い値が得られるNTSC係数による加重平均法を用いた.ノイズ除去では,二値化により,微小領域のノイズを除去後,ラベリングを適用し,理想円と重なっている連結成分のみを残すことで行っている.本研究では,一般的なノイズ除去フィルタやモロフォロジ処理などはターゲットの形状変化が伴うため使用しなかった.③原画像の最右の円内の平均濃度を基準として,各領域における濃淡差を比較し,測定値に対して指数関数への適合度をR2乗値として計算することで,撮影されたファントム画像の評価を行う.しかし,超音波画像は潜在的に多くのノイズを含み,境界線が不明瞭であることや,高密度なターゲットでは,超音波の減衰が大きく,後方陰影によって内部の濃淡値が変化する.そのため,本研究では,ターゲットの80%の領域内における上半分の画素値を用いて平均値を取得し,ターゲットの濃淡値とした. 現在,当初の予定通りに進行しており,研究成果の論文化も実施できた.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,主に下記の2項目について実施する. 「画像データの収集」超音波装置は,機種やメーカーによる画質の違いが大きくあるため,異なる5機種でのデータ収集を実施し,本格的なソフトの動作確認を実施する.これにより,汎用性を確認し,多くの超音波従事者および装置での適用性を検討する.さらに,本ソフトの配布を行う. 「表示系の評価」JIS Z 4752-2-5は,モノクロ画像を表示することによって読影を行うカラーおよびモノクロ医用モニタの基準を示している.評価項目のうち,目視試験項目は実際の使用環境で問題が発生しないように外部光を含まないで評価する.測定項目は,データの再現性を保つために外部光を含まない状態で評価する.目視試験項目は,「全体評価」,「グレースケール」,「アーチファクト」を評価する.測定項目は,「輝度均一性」,「最大輝度」,「輝度比」,「色度均一性」を測定する.これらの評価には,TG18-QCパターン,TG18-UNL80パターン,TG18-LNパターンを超音波装置に搭載し測定する必要がある.これには,専用の表示ソフトと操作する簡易なしすてむの開発が必要となる.これらは,非常に困難が予想されるが,ALOKA Prosound L-KEY-93 REV.Cにテスト的に実施しており,さらに汎用性を高める改良が必要となる.プリンターに関しては,TG18-QCパターンをプリントアウトすることによりLUTの整合性を検証する必要がある.
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次年度の研究費の使用計画 |
国内交通費,参加費,宿泊費:200,000円 日本放射線技術学会総会,秋季大会にて本研究成果報告を行う.総会(会場:横浜,期間:4日間)交通費,参加費,宿泊費-100,000円.秋季大会(会場:福岡,期間:3日間)交通費,参加費,宿泊費-100,000円 物品購入:300,000円 昨年度,表示系評価のためのテストとして(株)ナナオよりモニタを購入した.フレームレートコントロールによるグレースケール表示関数や輝度値が変更ができることを確認した.本年度は,もう一台購入するとともに,専用のビデオカード,パソコン,超音波画像の出欲ができるプリンタを購入する.モニタは,専用の管理ツールにて各種パラメータを変化させることができるが,①キャリブレーションに時間が掛かる,②グレースケール表示関数の変化はわずかであるため比較する必要がある,③輝度値の比較が行いにくい.そのため,モニタを2台体制にすることによりグレースケール表示関数をGSDFとガンマ2.2に変更した時の視認性の違いや輝度値の変化に伴う影響を比較して評価できる.
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