研究課題/領域番号 |
24700509
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研究機関 | 岐阜医療科学大学 |
研究代表者 |
篠原 範充 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 講師 (00402222)
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キーワード | 乳房超音波 / 精度管理 / ファントム / モニタ / 乳がん |
研究概要 |
これまで,乳房専用の超音波検査は,日本乳腺甲状腺超音波診断会議により編集された乳房超音波診断ガイドラインを基にその精度管理が実施されてきた.超音波診断装置に関する精度管理は,ゲインやダイナミックレンジなどの基本的な項目の共通基準を設けるのが困難であり,検査経験の浅い医師・技師にとって再現性の高い精度管理を実施することは極めて困難である.また,乳腺超音波診断装置の画像劣化は,少しずつ変化が進んでいき,日常の検査中にそれらを把握することは困難である.もし,劣化が進んでいても各種パラメータの調節により適正に近い画像が得られてしまうため,今まで積極的な精度管理は行われてこなかった.ガイドラインにも明確に記載されておらずユーザーに多くが委ねられているのが現状である. そこで,ファントムを用いた乳腺超音波診断装置のための精度管理が提案されており,今後,普及することが予想される.現在,ファントム画像の評価は,視覚による主観的な手法が中心であり,客観的な評価方法の確立が望まれている.そこで,我々は,これまでファントムのためのターゲット解析ツールを開発し,再現性高く精度管理を実施する方法を提案した.これにより出力部分の標準化につながる可能性を示すことができた.現在,表示部分である超音波装置附属のモニタにおいて,その標準化を目指している.本研究成果は,下記論文および発表を行った. ・乳房超音波診断装置専用ファントムのMassターゲット解析のための精度管理ツールの開発,日本乳癌検診学会誌 22(2): 336 -342 2013 ・乳腺超音波装置付属モニタの表示関数に関する研究,第41回日本放射線技術学会秋季学術大会,10月,福岡 ・Quality control of ultrasonography system for breast screening,12月,シカゴ
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,画像形成の精度管理と表示系の精度管理の2つの段階に分かれる.これまでのい2年間,我々は,乳腺超音波診断装置の統一的な精度管理を目指して乳腺超音波診断装置専用ファントムの開発を行ってきた.これらのファントムが,多くの施設で不変性試験に用いることができるように改良し,画像形成の精度管理を実施できるようにした. 現在,ファントムを用いた精度管理は,乳腺超音波診断装置でファントムを撮像し,得られた画像を目視により評価する方法が提案されている本研究では,目視による主観的な評価に置き換わる客観的,再現性の高いデジタル画像解析を応用した定量的評価方法を開発し,その有用性を検討した.すでにこれらに関しては1年半ほどで達成して論文化している.現在,乳房超音波に習熟した医師にソフトを配布し,検証実験を行っている. 昨年度10月より取り組んでいる課題である表示系の精度管理は,超音波装置内にJIS Z 4752-2-5で用いるデジタルファントムを導入し,規定された管理項目を実施する.これには,超音波装置内に表示が可能なソフトと操作が可能なシステムの搭載が必須となる.これら,表示に関するシステムの開発とともに,GSDFでの運用についての可能性を検討している.これらは,計画通りでありおおむね順調と考える.
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今後の研究の推進方策 |
すでに,画像形成および表示系の精度管理項目について,国内の乳がん関連,放射線関連の学会にて発表しており,一部論文化も行っている.現在,研究を進行している表示件に関しても,観察者実験を計画しており,倫理委員会などの承認も得ている.そのため,最終年度である本年度は,表示系の実証を中心に研究を行い発表,論文化を行う. さらに画像形成に関するソフトは,乳房超音波に習熟した医師に配布し,検証実験を行っているが,一部DICOMの形式の問題などで汎用性に欠ける部分がある.この部分を修正して,日本乳癌検診学会など乳がん関連の学術団体などを通してソフトの配布を行い,多くの超音波従事者が使用できるようにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
10720円と少額であり,高額な物品購入には予算上不足していた.これは,計画以上に研究進度が早かったことに起因する. 配布用のCDやパッケージの購入費に充てる
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