当該研究グループで開発された開放空間においても撮像可能なOpenPETを用いて、ラットの脳へのC-11ビーム照射直後からの時間放射能曲線の解析を行った。2成分の生理的影響による洗い出し速度(中間成分k2m、遅い成分k2s)を仮定して、核医学で用いられるコンパートモデルを応用した結果、平均の洗い出し速度は、ラット(N=4)では、k2m=0.54 min-1、k2s=0.011 min-1であった。このk2mはO-15標識水による脳血流測定で得られた洗い出し速度に近い。そこで脳血流を増加させるアセタゾラミド(ACZ)を投与し、投与していない場合(Rest)と比較した。ラットの脳(N=6)に照射した結果を時間放射能曲線のスタートをより正確に決めて(最後のスピルの始まりから2秒後)再解析したところ、昨年度の報告とは異なりRest、ACZそれぞれ0.41±0.06、0.28±0.06になり有意な差が得られた。つまり血流が増加したACZの方が洗い出し速度が遅くなった。これは入射したC-11の多くが最終的にCO2なった仮定すると説明できるかもしれない。アセタゾラミドの投与により炭酸脱水酵素が阻害され組織中のCO2濃度が高くなり、C-11起源の11CO2が拡散しづらくなった、あるいは11CO2がイオンに分解されることなく組織に残っていると考えることができる。これらの結果を論文にまとめて投稿中である。入射したC-11の化学形を決めるいくつかの実験を試みたが、感度の問題等で決定することができなかったが、この結果は11CO2になったことを示唆している。粒子線治療において照射野可視化の試みとしてPETが先行しているが、洗い出しの影響が問題となっている。より正確な補正には洗い出し速度の測定やその機序の解明が必要で、本研究の結果は、その基礎データの提供とメカニズムの理解に貢献できたと考えられる
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