研究課題
転倒の危険性や姿勢の安定性に不安を持つ高齢者や患者は多い.このような姿勢不安定性を示す者が豊かな日常生活を送るためには,安定した姿勢保持能力の再獲得が不可欠である.しかしながら,姿勢能力における学習メカニズムは未だ調べられていない.そのため,随意運動を繰り返し行なった時の姿勢学習と外乱刺激が加わった時の姿勢学習メカニズムを調べた.立位での上肢運動における運動学習と姿勢学習を調べる研究として,リーチ動作の繰り返し運動課題,及び重錘を把持した状態から合図とともに重錘を離し,落下させる運動課題を行った.また,外乱刺激に対する修正姿勢応答を観察する研究として,床面が正弦波状に傾斜を繰り返す外乱課題を行い,立位姿勢保持のための姿勢応答の適応を調べた.上肢随意運動課題を繰り返し行うと健常者では数十回の繰り返しで姿勢応答が変化した.特に,運動が起こる前に出現する予測的姿勢制御の出現タイミングや活動量が劇的に変化することを発見した.このことは上肢での運動学習で観察されるのと同様,不随意的(無意識的)に行われる姿勢応答の学習においても上位中枢が関与していることを示唆している.また,高齢者においても上肢運動の繰り返しにより姿勢応答が変化し姿勢学習が観察された.しかしながら,健常者よりも多くの繰り返し回数が必要であり,その変化量も小さく,姿勢学習の効果に加齢が影響することが示唆された.さらに,外乱刺激に対する姿勢応答はほんの数回の繰り返しでも姿勢応答が変化するが,これらの変化は持続的効果を持たない.数百回繰り返すことで持続的効果を認めた.これらのことは,姿勢学習には高頻度のトレーニングが必要であることを示唆しているが,適切に行えば姿勢能力の改善と持続効果が期待できることを示しており,高齢者や患者のリハビリテーションや能力再獲得に重要な手がかりとなろう.
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