研究課題/領域番号 |
24700517
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
藤田 俊文 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (60431441)
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キーワード | 筋循環・代謝 / 筋機能 / 全身振動刺激 / 脳卒中 / 近赤外線分光法 / 表面筋電図 / リハビリテーション |
研究概要 |
平成25年度は、脳卒中患者を対象に全身振動刺激(Wholw Body Vibration:WBV)による運動時の筋機能および運動能力の即時効果について調査した。対象者は5名で平均年齢58歳、すべて男性であった。運動麻痺は軽度から中等度であり、下肢の片麻痺機能はBr.stage4~6であった。 介入方法は、WBV機器のプラットフォーム上にて、足幅を10cm開いたスクワット肢位保持(膝関節軽度屈曲位(30~40度))を1分間実施、その後に1分間立位姿勢での休憩を3セット実施した。また、運動時の振動振動数は25Hzとした。評価は、介入前後に5回反復起立動作テスト(所要時間測定)を実施した。また、5回反復起立テストおよびWBV実施中の筋機能評価として、表面筋電計(バイオモニターME6000)を使用し、電極を両側の内側広筋、大腿二頭筋、前脛骨筋、腓腹筋内側に貼付して測定した。 WBV前後の5回反復起立テストの結果より、WBV後で有意に所要時間が短縮した。また、WBV前後の起立テスト時の筋電図を周波数解析し比較したところ、WBV前よりも後において下肢筋(特に内側広筋、前脛骨筋)で値高周波成分が増加している結果となった。これらの結果より、WBVを用いた運動実施後では、速筋線維の筋活動の賦活化が図られ、その影響により5回反復起立テストの所要時間の短縮が得られたと考えられる。また、WBV実施中の筋活動について、10秒間ごとの平均パワー周波数(MPF)の観察より、内側広筋において麻痺側は0-30秒にかけて低下、また非麻痺側は0-30秒で増加する傾向が観察された。加えて、前脛骨筋では時間の経過とともに麻痺側筋活動が低下する傾向があり、それぞれの筋により特異的な傾向を示した。この点は筋線維タイプの影響、とくに筋代謝・循環機能が影響するものと考えられ次年度の課題として実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、所属研究機関の改修工事による研究室・実験室の確保が困難な状態であったため、健常成人を対象とした研究はやや遅延している。ただし、臨床データの収集は協力施設との連携により、即時効果の検討が可能となった。加えて、現在も継続してデータ収集を行っているところであり、結果としても興味深いデータが得られたことは評価出来る部分である。 当初の研究計画通りに進行していない部分はあるものの、脳卒中患者に対する全身振動刺激による運動の実行可能性や即時効果など、本研究と派生した内容の臨床データの収集は進んでいる。よって「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、継続して健常成人を対象とした基礎データ収集および脳卒中患者を対象とした臨床データ収集を実施していく。特に健常成人を対象とした調査では、全身振動刺激による運動時の筋循環・代謝機能の検証を実施し、また、脳卒中患者を対象とした調査では、全身振動刺激を実施した際の筋機能や循環動態と身体機能、運動能力との関連性について横断的・縦断的に検証していく。特に、現在継続している即時効果の検討を様々な視点から調査する。加えて、縦断的調査に関しては、協力施設と密な連携を図り実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の配分額についてはほぼ計画通りに使用したが、平成24年度の繰越金があり、その部分がそのまま平成26年度への繰越となっている。当初の予定では、学会発表や投稿論文への支出予定であったが、平成24年度~平成25年度にかけて、所属する施設の改修工事と重なっており、十分な実験・研究環境が準備できず研究計画がやや遅延している部分がある。その影響により、支出が減少しており次年度への繰越としている。 次年度は最終年度ということもあり、研究データの結果発表として学会発表および論文投稿へ積極的に支出する予定である。加えて、基礎研究部分で代謝機能として派生した内容を計画しており、特に全身振動刺激による生体へのストレス応答として、酸化ストレス測定を実施予定としており、その部分での物品や消耗品などの購入に予算配分する計画を立てている。
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