研究課題/領域番号 |
24700522
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
那須 久代 東京医科歯科大学, 医学部, 技術職員 (90622556)
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キーワード | 肉眼解剖学 |
研究概要 |
1.肩関節周囲に分布する腋窩神経について 腋窩神経は通常,前枝と後枝に分岐し,後枝は三角筋後部に,前枝は三角筋中部と前部に分布する。本研究では,特に腋窩神経前枝からの枝に着目して,筋枝以外の枝の有無と存在する場合にはその分布領域について調査を行った。対象は,東京医科歯科大学解剖実習体10体20側であった。腋窩神経前枝の枝は,20側中12側で肩峰下滑液包に,8側で上腕二頭筋周囲の結合組織に分布していた。また,20側中3側では,結節間溝に沿って上行し,結節間溝の近位で骨皮質に進入する枝が存在した。これらの部位への腋窩神経の分布はこれまでに報告されておらず,新しい発見といえる。肩関節疾患を有する患者において,上腕外側に生じる痛みの原因は肩甲上神経に由来すると考えられてきたが,腋窩神経の枝もその痛みの原因に関与していると考えられる。また,腋窩神経前枝の枝が結節間溝の近位で骨皮質に進入するという所見は,上腕二頭筋腱の腱固定術で腱固定の位置を決定する際に考慮すべきであろうと考えられる。 2.肩甲挙筋,菱形筋の神経支配について 平成24年度に前鋸筋の筋の構造と神経支配に関する調査を行い,前鋸筋と体幹筋との近似性が示唆された。この示唆をより確実にするために,前鋸筋と同一系の筋である肩甲挙筋,菱形筋の支配神経の分岐,走行,分布について調査を行った。肩甲挙筋枝は高位分節のものほど筋に対して腹側に位置し,下位分節のものほど背側に位置していた。また菱形筋枝は肩甲挙筋よりも背側に位置し,菱形筋の腹側よりを走行して分布していた。今後は体幹の筋の代表として斜角筋群の筋の構造と神経支配に関する調査を実施し,3筋と斜角筋群との相違について明らかにしていく。上肢と体幹の境界に位置する3筋の肉眼解剖学的所見は上肢および体幹の形成過程を考察するために有用な所見であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヨーロッパ臨床解剖学会において腋窩神経の肩関節周囲への神経分布について発表することができた。また,現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
肩甲挙筋,菱形筋の神経支配に加えて,体幹の筋の代表として斜角筋群の筋の構造と神経支配について調査を行っていく。平成24年度に報告した前鋸筋と,これと同一系であるとされる肩甲挙筋,菱形筋が体幹の筋とどのような関係を有しているかについて明らかにしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度分は旅費が割安だったため10万円程度の残額が生じた。残りの35万円程度は平成24年度分の残高であった。 次年度は,双眼ルーペを購入する予定である。
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