研究課題/領域番号 |
24700524
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
高本 考一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 客員助教 (00553116)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 徒手療法 / 慢性疼痛 / 腰痛 / 近赤外分光法 / 脳波 |
研究概要 |
本研究の目的は慢性疼痛に対する徒手療法の中枢神経系鎮痛作用メカニズムを明らかにすることである。これまで徒手療法の鎮痛作用メカニズムは、末梢性、及び脊髄レベルが関与する事が明らかにされつつあるが上位中枢を介する影響に関しては未だ解明されていない。本研究では、特に徒手アプローチの刺激入力部位の鎮痛効果の違いに着目し、トリガーポイント徒手圧迫刺激による即時および長期的脳機能変化を脳機能画像装置(近赤外分光法:NIRS及び脳波)を用いて検討する。24年度は、慢性腰痛及び頚部痛患者を対象にトリガーポイント圧迫刺激中の脳血行動態及び自律神経活動の影響をNIRSと心電図を用いて検討した。また圧迫前後の即時的治療効果を主観的疼痛評価スケール、末梢の機能的変化を指頭圧痛計により評価した。さらにこれら主観的な情動反応、末梢の機能的変化及び神経生理学的変化(中枢神経系及び自律神経活動)の相関関係を検討した。 慢性頚部痛患者を対象としたトリガーポイント圧迫群では、非トリガーポイント圧迫群と比較して有意に治療後主観的疼痛及び圧痛閾値が改善し、刺激中の前頭前野の活動減少、副交感神経活動の亢進することが明らかにされた。また圧迫刺激による自律神経活動変化と自覚所見及び脳活動との間には有意な相関関係が認められた。これらの結果は、慢性疼痛に対する徒手療法の即時的鎮痛効果が末梢の機能的変化のみならず、中枢神経系(特に前頭前野)を介することを示唆する。また本研究結果は、慢性疼痛に対する徒手療法において刺激部位が鎮痛効果をもたらす重要な手技因子となることが示唆された。現在、慢性腰痛患者に対して頚部と同様に徒手療法の中枢性鎮痛作用機序を明らかにするために、NIRSと脳波同時測定を行っている。現在、脳波データは解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度の計画は、当初、慢性腰痛患者のみを対象に実験を行う予定であったが、該当患者が少なく、データ数が不足している。そこで同様の発症機序を有すると想定される頚部痛患者も試験対象とした。現在、腰痛患者に対しても実験を行っており計画よりは遅れているが次年度内には当初予定していた被験者数でデータを集め解析が終わる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実験対象者が少なく、データが不足していることが実験遂行の遅れの原因となっている。そこでより実験対象者に本研究を周知または理解してもらうため研究協力して頂ける可能性のある他医療機関に働きかけ、実験内容を記したポスター等を掲示して頂く。頚部痛患者を対象とした研究では、データ数が確保できているため迅速にデータ解析を行い結果をまとめ学会発表、論文投稿する予定である。慢性頚部痛患者及び腰痛患者ともに同様の発症機序を有すると想定されるため、腰部痛患者から得られたデータを解析する際に比較・解析が可能となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた状況としては、実験の対象被験者を腰部痛患者ではなく頚部痛患者としたため、当初申請していた対象者と異なることから本学学内からボランティアとして参加して頂いており、本研究費から謝金支払いを行っていない(交通費は不要)。また当初購入予定だった筋硬度計は、測定対象とする筋層以外に脂肪層の影響を多く受ける可能性があることから購入する前に詳しく予備検討をしている。さらに研究が遅れているため当初計画していた研究成果発表が行えなかったため、該当する助成金が使用されなかった。次年度の研究費の使用計画としては、24年度分も含め研究参加した慢性腰部痛患者への謝金支払い、及び成果発表に使用する予定である。
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