本研究は慢性疼痛に対する徒手療法の中枢神経系鎮痛作用メカニズムを明らかにすることを目的とした。これまで徒手療法の鎮痛作用メカニズムは、末梢性、及び脊髄レベルが関与する事が明らかにされつつあるが上位中枢を介する影響に関しては未だ解明されていない。本研究では、特に徒手アプローチの刺激入力部位に着目し、筋性疼痛の原因部位とされるトリガーポイントへの徒手圧迫による脳機能変化を脳機能画像装置(近赤外分光法:NIRS及び脳波)により検討した。25年度は、慢性腰痛患者を対象にトリガーポイント圧迫刺激中の脳血行動態及び脳活動変化をNIRSと脳波同時測定により計測した。NIRS測定からトリガーポイント圧迫は、刺激中に頚部痛患者と同様に前頭前野の活動が休息期と比較し減少することが明らかとなった。非トリガーポイント圧迫では、休息期と比較し前頭前野の活動変化が認められなかった。また脳波測定からトリガーポイント圧迫中は、前頭前野領域のα波が休息期と比較し増加することが明らかとなった。さらに脳波コヒーレンスを用いてトリガーポイント圧迫中の脳部位間のネットワークを検討した。トリガーポイント圧迫中は、α帯域において主に前頭葉、頭頂葉、後頭葉領域の皮質間コヒーレンスが休息期と比較し増大することが明らかとなった。
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