研究課題/領域番号 |
24700526
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
佐々木 努 信州大学, 医学部, 講師 (00404781)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 認知機能 |
研究概要 |
医療機関で行える自動車運転能力評価の一部として,自動車運転状況判断能力評価システムの開発を行った.本年度の計画では,1)運転映像を作成する,2)健常ドライバーの注意特性を明らかにする,3)健常ドライバーの状況判断能力を明らかにすることの3点を達成目標に活動を行った.研究成果は以下の通りである. 1)運転映像を作成する;ドライブレコーダーを用いて撮影した運転動画から,住宅地,市街地,駐車場,右折左折場面など8つの場面で構成された2分間の運転シナリオを編集・作成した.また,この運転シナリオに対する状況判断能力を測定するために,タッチパネル式ノート型PCで評価システムを構築した. 2)健常ドライバーの注意配分特性を明らかにする;2名の健常者の運転シナリオ視聴中の視線応答をアイマークレコーダーで計測した.結果,危険が予測される場面や対象に視線を向けることが明らかになった.視線は一点に留まることが少ないことも明らかになった.一方で,場面や対象によって危険個所への注視持続時間がことなることも明らかとなった.また,注視箇所は3)に示されている高齢ドライバーの指摘箇所がすべて網羅されていることも明らかになった. 3)健常ドライバーの状況判断能力を明らかにする;67名(平均67歳)の被験者に,運転シナリオの中で危険が予測される場面を指摘するよう求めた.危険と判断した理由とそれに対する対処行動を口答するよう求めた.結果,2分間のシナリオで平均10個の危険個所が指摘された.対処行動としては,減速,停車,注意だけ払っておく,車線の変更という4つの対処方法が主に挙げられた.この結果は,高齢ドライバーの基準データとして用いる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画1『運転映像を作成する(評価システムの構築を含む)』:ドライブレコーダーを用いて実車での運転映像をスケジュール通り作成することができた.一方で,評価システムの構築の段階では,データの保存方法や評価者のコメント入力方法の修正・変更が重なり,予定より2か月程度多くの時間を要した.プログラムのシステム設計を細部まで作成し,システム構築を依頼する必要があった.研究計画2『健常ドライバーの注意特性を明らかにする』:アイマークレコーダー(EMR-9)の特性上,日常で眼鏡を装着している対象者のデータ計測が難しいことが知られている.そのため,高齢者ではデータ収集ができず,若年者でのデータ収集となった.研究計画3『健常ドライバーの状況判断能力の明確化』:67名(平均67歳)の高齢ドライバーの状況判断能力の特性を明らかにすることができた.当初予定通りである.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた研究計画に大きな変更はない. 初年度の達成度を受け,今後は大きく2つの課題に取り組んでいく.1つめは,若年健常者の運転シナリオ視聴中の注視特性を明らかにすることである.運転シナリオ視聴中の注意特性は,眼球運動計測を行い,視線停留点軌跡,視線停留位置,視線停留時間などを指標にして明らかにしていく.計測にはnac社製のEMR-9を用いる予定である.2つめは,67名の高齢ドライバーから得られた状況判断課題の基準データに基づいて,脳損傷患者の運転シナリオにおける状況判断能力の特性を明らかにしていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため,次年度使用額が生じている.次年度の主たる研究費の使用は2つである.1つは,本年度に構築した基準データに基づいて,脳損傷患者のデータ収集を行うための費用である.協力病院が研究代表者の前所属地である札幌となるため,該当費用が必要である.2つ目は,成果報告である.11月に行われる第6回自動車運転と認知機能研究会への参加ならびに,論文投稿のための費用に支出する予定である.その他,次年度は有疾患者を対象とするため,新たにソフトウェア修正の必要性が生じた場合に一部費用を支出する可能性がある.
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