これまで2年間に実施された研究によって精選された評価項目や評価ツールを、CALMSモデルに基づく多面的モデルの概念[C=Cognitive(認知・知識面)、A=Affective(感情・態度面)、Linguistic(言語能力)、M=Motor(口腔運動能力)、S=Social(社会性・社交性)]に組み込み、吃音に対する知識・自己認知の程度、吃音に対する態度や感情、全般的な言語能力、口腔運動能力、社会性・社交性を総合的に評価する吃音総合アセスメントツールの開発を行った。 昨年度に引き続き、評価項目の選定やCALMSアセスメントツールの信頼性及び妥当性の検討などの作業を完了させ、日本語化したマニュアルを基に、作成したアセスメントツールの信頼性及び妥当性を検証するためのパイロット研究を再度行い、その結果に基づき、最終確定版を作成した。検証に当たっては、アセスメントを実施する言語聴覚士及びことばの教室担当教員計10名が担当するケース計20名、それから研究代表者が臨床を行っているケース8名に、この評価ツールを用い、その他の評価ツールによる結果やケースの臨床象との齟齬がないかどうかを確認した。 その結果、本評価ツールの結果と他の評価ツールや臨床家によるケースの臨床像とには齟齬がなく、吃音に対して多面的・包括的にアプローチするために有効なツールであることが確認された。また、本ツールにより、ケースのより困り度の高い部分から臨床に取り組んだ結果、従前の臨床方法よりも20%程度臨床終了までの期間を縮めることができた。ただし、実験群と統制群2名ずつのパイロット研究であるため、今後、さらに臨床研究を進め、多面的・包括的アプローチによる臨床効果の有効性を検証する必要がある。 昨年度はやや遅れ気味であったが、今年度は本研究の全研究期間で予定していた以上の研究成果を上げることができた。
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