研究課題/領域番号 |
24700536
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
瀬島 吉裕 山口大学, 理工学研究科, 助教 (40584404)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ヒューマンインタフェース / コミュニケーション / インタラクション / アイコンタクト / 画像処理 |
研究概要 |
近年,日本の総人口におけるうつ病等の気分障害の割合が年々増加しているが,効果的な予防法の研究や試行がなされていない. 本研究では,対面コミュニケーション時の姿勢や眼球運動・アイコンタクトを計測し,それを客観指標化できるアイコンタクト計測システムの研究開発を進めている. 本年度は,対面コミュニケーションにおける新たなアイコンタクト計測手法に関するコミュニケーション実験とシステム開発を行った.具体的には,可視光を透過し赤外光のみを反射する特性を有するダイクロイックミラーを対話者間に配置した場合でのコミュニケーション効果を確認するために,2者間コミュニケーションを実施した.その結果,ミラーを配置した場合でのコミュニケーションにおいても,同様のコミュニケーション効果が得られることを確認するとともに,視線がミラーの中心に集中しやすくなる傾向があることを示した.この結果を基に,新たにアイコンタクト計測システムのプロトタイプを試作した.このシステムは,PC,ダイクロイックミラー,赤外線投光器,ビデオカメラから構成されている.対話者の後方から赤外線投光器(ピーク値:940nm)を用いてミラーに対して照射を行うことで,赤外光を反射する特性により各対話者の上半身の映像が反射される.この反射映像を後方に配置したビデオカメラにて撮影し,得られた上半身の映像を画像処理することで,対話者の姿勢や眼球の方向を推定している. さらに,気分が落ち込んでいる状態を擬似的に生成するために,気分が落ち込むような映像について十分に議論・検討検討を行った. また,2者間のコミュニケーションだけでなく,集団での視線インタラクション支援システムの設計や,CGキャラクタを介した視線インタフェースの開発などの研究開発も並行して進めており,来年度にはこれらの視線計測技術を統合させた視線計測システムの開発を進めたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目標では,アイコンタクト計測システムのプロトタイプの開発とそのコミュニケーション効果の評価を行うことを主目的としている.本年度は,対面コミュニケーションにおける新たなアイコンタクト計測手法に関するコミュニケーション実験とシステム開発を行った.具体的には,可視光を透過し赤外光のみを反射する特性を有するダイクロイックミラーを対話者間に配置した場合でのコミュニケーション効果を確認するために,2者間コミュニケーションを実施した.その結果,ミラーを配置した場合でのコミュニケーションにおいても,同様のコミュニケーション効果が得られることを確認するとともに,視線がミラーの中心に集中しやすくなる傾向があることを示した. この結果を基に,新たにアイコンタクト計測システムのプロトタイプを試作した.このシステムは,PC,ダイクロイックミラー,赤外線投光器,ビデオカメラから構成されている.対話者の後方から赤外線投光器(ピーク値:940nm)を用いてミラーに対して照射を行うことで,赤外光を反射する特性により各対話者の上半身の映像が反射される.この反射映像を後方に配置したビデオカメラにて撮影し,得られた上半身の映像を画像処理することで,対話者の姿勢や眼球の方向を推定している. 以上の研究実施内容は,本年度の研究目標に対して同程度の進捗状況と判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度では,これまでに開発してきたアイコンタクト計測システムのプロトタイプの精度評価および有効性の検討を主目標として進めていく. まず従来計測手法の頭部装着型視線計測装置を用い,本研究で開発したプロトタイプシステムの精度検証を行う.具体的には,まず,本学の学生20人程度に対して2人1組になり,日常会話を行わせる.その後,記録されたビデオ映像から主観評価でアイコンタクトを行った区間を特定する.その区間と計測されたアイコンタクトとの一致度により精度評価を行う.精度が出にくい場合は,システム開発へと立ち戻り,赤外光の感度調整や画像処理の精度向上など,ハード面・ソフト面の向上を図り,高い精度での計測を検証する. 次に,行動特性指標としてのアイコンタクトの有効性を検討する.具体的には,気分が落ち込むような映像を選定し,気分が落ち込んでいる状態を擬似的に生成する.気分が落ち込んでいるかどうかをアンケートにより判断し,そのときのアイコンタクトを計測する.その際,官能評価による心理的な分析や,皮膚電位計による客観的な生理指標を計測し,アイコンタクトとの相互関係を解析する.とくに,性格等による視線行動の非定常性などが問題となるが,質問項目の選定や被験者数の増加などの対策によって,個人差によるスクリーニングを行うことが可能である.これらスクリーニングによって得られた知見が,臨床研究レベルでの指標化が可能かどうかを,山口大学大学院医学系研究科高次脳機能病態学分野の医師に精神医学的な視点からアドバイスを受け,今後の臨床研究へ向けた応用可能性又は改善点を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,プロトタイプシステムの精度評価を行うため,ハードウェア・ソフトウェアの改良を行う.ハードウェアの改良として,高解像度なビデオカメラへの変更や赤外線の感度調整のため投光器の改良等がある.これらのシステム開発・改良のために,物品費として70万円程度を予定している. また,システムの精度評価やアイコンタクトの機能評価のために,実験協力者に対する人件費を10万円程度を予定している. 研究成果発表や研究資料収集・調査のために,旅費を30万円程度予定している.
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