【目的】保育所の保育士が、発達障害の疑いのある子どもに十分対応できる研修の在り方を提案するために本研究を実施した。本研究の目的は、作業療法士(OT)がペアレント・トレーニング保育士版(ティーチャー・トレーニング)を用いて保育士に介入することで、その保育士が担当する発達障害の疑いのある子どもの行動特徴や保育士の「気になる行動」の改善を調査することとした。 【方法】発達障害の疑いのある児が、支援のないまま多数在籍しているB市の保育所において、OTが保育士を対象に約半年に渡るティーチャー・トレーニングのプログラムを用いて介入した。介入期間の前後に1ヵ月のベースライン期を設け、ベースライン前、介入前・後、ベースライン後の計4回、保育士に質問紙「子どもの行動チェックリスト教師版(TRF)」の記入を求め、保育士から挙げられた子どもの「気になる行動」に対する保育士の「重要度」、子どもの「遂行度」、保育士の「満足度」を「カナダ作業遂行測定COPM)」を用いて測定した。 【結果】各年度1回ずつ、ティーチャー・トレーニングを実施し、対象者は計7名であった。TRFによる効果は認められなかったが、COPMにおいては、介入前から介入後において「重要度」は有意に低下し、「満足度」は有意に向上した(P<0.01)。さらに1ヵ月後においても「重要度」も「満足度」は持続した。「遂行度」は介入前・後では効果は認められなかったが、1ヵ月後には有意に向上した。 【考察】ティーチャー・トレーニングを受けて保育士は「気になる行動」の「重要度」が低下したことから、「気になる」度合いが下がったと考えられる。さらに介入後においては、子どもの「遂行度」は向上せずとも保育士の「満足度」は向上したことから、子どもの行動に対する捉え方が変化し、子どもとの関係に満足できるようになり、その結果子どもの「遂行度」が向上したと推察できる。
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