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2013 年度 実施状況報告書

磁気刺激を利用した拘縮の新たな治療法の確立のための実験的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24700539
研究機関長崎大学

研究代表者

坂本 淳哉  長崎大学, 大学病院, 理学療法士 (20584080)

キーワード不動 / 拘縮 / 線維化 / 低酸素 / 筋収縮運動
研究概要

本年度は、不動により惹起される拘縮の発生・進行に持続的磁気刺激による筋収縮運動がおよぼす影響について検討する予定であったが、これまでの実験に用いていた磁気刺激装置の使用が困難になったため、電気刺激による周期的な筋収縮運動が拘縮の発生およぼす影響ついて検討した。具体的には、8週齢のWistar 系雄性ラット21匹を無処置の対照群(n=7)とギプス包帯を用いて両側足関節を最大底屈位で4週間不動化する実験群(n=14)に振り分け、さらに、実験群は不動のみを行う不動群(n=7)と不動状態のまま電気刺激を用いて両側ヒラメ筋に筋収縮運動を負荷する刺激群(n=7)に振り分けた。なお、刺激群のラットに対してはリード線付きの表面電極を下腿後面に貼付した状態でギプス包帯による不動化を行い、電気刺激の際はこのリード線に電気刺激装置を接続した。そして、周波数1Hz、刺激強度4mAの条件にて、1日1回60分、週5回の頻度で電気刺激による周期的な筋収縮を負荷した。その結果、実験期間終了後の刺激群と不動群の足関節背屈可動域は対照群のそれより有意に低値であったが、刺激群は不動群と比べて有意に高値を示した。また、タイプ1コラーゲンと筋線維芽細胞のマーカーであるα-SMAのmRNA発現量は刺激群と不動群は対照群より有意に高値であったが、刺激群は不動群より有意に低値であった。また、TGF-βとHIF-1αのmRNA発現量は不動群のみ対照群と刺激群に比べて有意に高値で、この2群間には有意差は認められなかった。つまり、これらの結果から、低酸素状態の惹起が拘縮の進行のキーファクターの一つになっている可能性があり、また、周期的な筋収縮運動は低酸素状態の軽減に効果があり、不動の過程においてこれを負荷することで骨格筋の線維化ならびに拘縮の発生が軽減することが明らかとなり、新たな拘縮に対する治療戦略の可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は、磁気刺激により経皮的に脊髄前角細胞を刺激することで筋収縮運動を負荷し、これが不動によって惹起される拘縮の発生・進行におよぼす影響について検討することで、得られた成果を基に新たな拘縮の予防・治療方法の確立をすることを目的としている。本年度は持続的刺激による筋収縮運動の効果について検討する予定であったが、これまでに使用してきた磁気刺激装置はヒト用の装置であり、昨年度実施した間欠的刺激は実施可能であったものの、持続的刺激は装置の仕様上困難であることが判明した。そこで、本年度は当初の予定を変更して電気刺激装置を用いて昨年同様に間欠的な筋収縮運動を負荷することで実験を行った。その結果、ほぼ昨年度と同様の結果が得られており、間欠的な筋収縮運動は拘縮の進行抑制に有効であり、これは不動によって惹起される骨格筋の低酸素状態を緩和することでその線維化を抑制することにより得られることが示唆された。今後は現在開発途中である小動物用磁気刺激装置を用いて本年度の実験結果について再検討するとともに、持続的刺激による筋収縮運動の効果についても検討する予定である。

今後の研究の推進方策

現在、小動物用磁気刺激装置を作成しており、実験に使用することが可能な段階に近づいている。そこで、本年度は不動の過程で磁気刺激による筋収縮運動を負荷して、持続的刺激による筋収縮運動の効果について検討する予定である。具体的には、実験期間を1・2・4週間とし、8週齢の成熟したWistar系雄性ラットを1)無処置の対照群(各実験期間10匹、合計30匹)、2)ギプスにより足関節を不動化する不動群(各実験期間10匹、合計30匹)、3)不動の過程で持続的磁気刺激を負荷する群(各実験期間10匹、合計30匹)の3群に振り分ける。そして、刺激群のラットに対しては100%出力(立ち上がり時間100μs、最大頂点磁場強度1。0T、20Hz、60分間持続刺激)の条件にて、1日60分、周5回の頻度で磁気刺激の負荷を行う。そして、各実験期間終了後には、足関節背屈可動域を計測して拘縮の発生・進行状況を評価し、また、ヒラメ筋を検索対象として骨格筋における線維化の発生状況および線維化関連分子の動態について検討を行う。なお、試料作成および検索方法は平成24年と同様の方法で行う。そして、得られた結果については、平成24・25年度の結果と比較・検討して、より効果的な拘縮の発生・進行の予防方法について明らかにすることを目標とする。

次年度の研究費の使用計画

磁気刺激装置の使用が困難となり、当該年度に予定していた研究計画の遂行ができず、代替手段により実験を行うことで、当初の支出予定額との間に差が生じたため。
実験を遂行する上で必要なラットの購入費および試薬の購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 不動の過程における周期的な単収縮の誘発が骨格筋の線維化に及ぼす影響.2013

    • 著者名/発表者名
      田中美帆,川嵜真理子,本田祐一郎,坂本淳哉,中野治郎,沖田 実
    • 学会等名
      日本基礎理学療法学会
    • 発表場所
      名古屋大学医学部保健学科 大幸キャンパス(名古屋市)
    • 年月日
      20131027-20131027
  • [学会発表] The up-regulation of IL-1b/TGF-b and hypoxia induced in immobilization are related to the molecular mechanisms underlying muscle contracture.2013

    • 著者名/発表者名
      Honda Y, Kondo Y, Sasabe R, Sekino Y, Morimoto Y, Kataoka H, Sakamoto J, Nakano J, Yoshimura T, Okita M
    • 学会等名
      World Congress of Neurology
    • 発表場所
      Vienna, Austria
    • 年月日
      20130921-20130926
  • [学会発表] ギプス固定下でも磁気刺激によって周期的な筋収縮を誘発すると筋性拘縮の発生が軽減する.2013

    • 著者名/発表者名
      原槙希世子,岡村千紘,本田祐一郎,坂本淳哉,中野治郎,沖田 実
    • 学会等名
      第48回日本理学療法学術大会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(名古屋市)
    • 年月日
      20130524-20130526

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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