本年度は磁気刺激により不動状態に曝されたラットヒラメ筋に強縮を誘発し,骨格筋の線維化ならびに筋性拘縮におよぼす影響について検討する予定であったが,磁気刺激装置に不具合が生じたために,筋収縮運動を誘発するツールを電気刺激装置に変更して実験を実施した.具体的には,8 週齢のWistar 系雄性ラットを用い,1)無処置の対照群(n=10),2)ギプス包帯を用いて両側足関節を最大底屈位で4 週間不動化する不動群(n=8),3)不動状態のまま周波数10Hzの電気刺激により単収縮を負荷する単収縮群(n=8),4)同様に周波数50Hzの電気刺激により強縮を負荷する強縮群(n=9)に振り分けた.そして,刺激強度4mA,1日1回30分,週6回の頻度で電気刺激を行った.実験期間終了後は足関節背屈可動域(ROM)を計測し、ヒラメ筋における線維化関連分子(HIF-1α,TGF-β1,α-SMA,タイプIコラーゲン )の動態について免疫組織蛍光染色ならびにreal time RT-PCR法にて解析した。 その結果、ROMについては対照群が最も高値で,次いで,単収縮群,強縮群,不動群の順に有意に高値であった.そして,単収縮群の線維化関連分子の発現量は対照群と同程度で,不動群より有意に抑制されていた.一方,強縮群については線維化関連分子の発現量は対照群より有意に増加しており,不動群と同程度であった。 今回の結果から,不動状態に曝された骨格筋に単収縮を負荷すると,骨格筋の低酸素状態の惹起やTGF-β1の発現が抑制され,線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化やコラーゲンの産生が軽減されることが明らかとなり,これは磁気刺激により単収縮を誘発した場合と同様の結果であった.一方,骨格筋に強縮を負荷しても不動によって惹起される線維化は軽減されず,収縮様式の違いにより拘縮の進行抑制効果が異なることが示唆された.
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