本研究は脳卒中患者の同名半盲など中枢性視野障害に対し,視覚課題呈示時の脳活動を脳機能イメージングを用いて評価するために,適切な刺激呈示課題を開発することを目的とした。これにより中枢性視野障害に対するリハビリテーション場面での適切な障害の評価や訓練方法の選択,ならびにこれらの新規開発の基礎になることが期待された。 まず,近赤外線トポグラフィー(near‐infrared spectroscopy ; NIRS)を用いて健常者ならびに同名半盲を有する視野障害患者を対象に,各種の視覚課題を呈示して脳活動の変化を明らかにすることを目標とした。当初,視覚提示課題として,白黒を反転させた2枚1組のチェッカー(格子)模様を一定の間隔で繰り返し呈示した。この視覚提示課題では,同一被検者あるいは異なる被検者間での再現性に乏しく,有効な課題として選択できない可能性が示唆された。 続いて,視覚提示課題として画面中央に固視点を呈示し被検者に注視させ,周辺視野に目標とする刺激点をランダムな場所にランダムなタイミングで呈示する課題を選択した。刺激点はビープ音と共に呈示され,被検者には刺激点を発見した時点でボタンを押して知らせることを指示した。数回に一度はビープ音後に刺激点が表示されない(偽刺激)条件となっており,刺激点を発見しない状態でボタンを押すなどの回数についても評価できることから,被検者の反応に対する信頼性も評価できる課題とした。本年度はこの視覚課題を健常者に対して呈示しNIRSで脳活動を評価し,同一被検者ならびに異なる被検者での再現性が確認された。 今後,当研究で作成した視覚提示課題を用いて脳卒中による中枢性視野障害患者における脳活動変化を評価し,新たな訓練手法を開発することを計画している。
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