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2012 年度 実施状況報告書

温熱刺激は関節リウマチに伴う筋機能の低下を改善するか?

研究課題

研究課題/領域番号 24700541
研究機関札幌医科大学

研究代表者

山田 崇史  札幌医科大学, 保健医療学部, 講師 (50583176)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード関節リウマチ / 筋力低下 / パーオキシナイトライト / ミオシンATPase / SERCA
研究概要

本研究の全体構想は,関節リウマチ(RA)に伴う筋機能低下の要因について,一酸化窒素の役割に着目して検討する(平成24年度)とともに,対抗手段としての温熱刺激の効果とその作用機序について明らかにする(平成25年度)ことである.
実験には,Lewis系雄性ラットを用い,両膝関節腔に完全フロイントアジュバント(CFA: 2 mg/0.2 ml)を注射することでアジュバント関節炎(AIA)を惹起した.CFA投与後1週(AIA1wk群),2週(AIA2wk群),3週(AIA3wk群)において,膝関節幅は対照群に比べ増大した.また,速筋である長趾伸筋および遅筋であるヒラメ筋を採取し,強縮張力を測定したところ,長趾伸筋ではAIA3wk群において,ヒラメ筋ではAIA各群において,固有張力の低下が認められた.さらに,ウェスタンブロッティング法を用いた検討において,AIA3wk群では,いずれの筋においても,3-ニトロチロシンの含有量が顕著に増大していた.
骨格筋の収縮及び弛緩において,それぞれ中心的な役割を果たすミオシンATPase及び筋小胞体Ca2+-ATPase(SERCA)は,3-ニトロチロシンの誘導物質であるパーオキシナイトライトにより機能障害を受けることから,本研究では,これらの酵素の活性を測定した.その結果,両筋ともすべてのAIA群においてミオシンATPase活性に変化は認められなかった.一方,SERCA活性は,AIA1wk及びAIA2wk群の長趾伸筋において低下し,AIA3wk群のヒラメ筋では増加することが明らかとなった.
これらの知見から,AIAラットの骨格筋において認められる筋機能の低下が,一酸化窒素派生物であるパーオキシナイトライトの生成を伴うこと,また,ミオシンATPase及びSERCA機能の変化は筋機能の低下に関与しないことが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の全体構想は,関節リウマチ(RA)に伴う筋機能低下の要因を探索するとともに,効果的な筋力強化プログラムの開発を目指し,温熱刺激による筋機能の改善効果とその作用メカニズムについて検討することである.平成24年度では,当初の研究計画に従い,RAに伴う筋機能低下における一酸化窒素の役割に着目して検討を行った.研究実績の概要に記載した通り,予定されたほぼすべての実験課題を実施することができたことから,現在までの達成度として,おおむね順調に進行していると判断した.
本研究の結果から,アジュバント関節炎(AIA)ラットの骨格筋ではパーオキシナイトライトの生成量の増加が生じることが示唆された.そこで我々は,パーオキシナイトライトがミオシンATPase及びSERCA機能を抑制することで,筋機能の低下を誘引すると考え検討を行ったが,これらの酵素活性と筋機能との間に関連性は認められなかった.したがって,当初実施が予定されていた,これらの酵素における翻訳後修飾の有無についての検討は実験項目から除外した.パーオキシナイトライトの生成量の増加が,筋機能低下に関与するかどうかに関しては,他の筋タンパク質,例えばエネルギー代謝に関与する酵素の機能などを測定することで今後さらに検討を進める予定である.

今後の研究の推進方策

関節リウマチ(RA)モデル動物であるアジュバント関節炎(AIA)ラットの骨格筋において,著しい筋力の低下が,筋タンパク質のニトロ化を伴うことを示した平成24年度の研究結果は,一酸化窒素派生物による酸化及び窒素化ストレスが,RAに伴う筋力低下の要因であるとする我々の仮説を支持するものであった.したがって,平成25年度は,当初の予定通り,温熱刺激がAIAラットの筋機能に及ぼす影響を検討する.これは,熱刺激により誘導される熱ショックタンパク質が,抗酸化作用及び変性タンパク質の修復・分解作用を有することから,これらが筋機能を改善する可能性があると考えられるからである.したがって,平成25年度の研究期間では,収縮機能の測定により温熱刺激の効果が認められた場合,熱ショックタンパク質の発現量及び筋タンパク質における3-ニトロチロシン含有量の測定を行うことで,その分子メカニズムについて検討する予定である.

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Impaired mitochondrial respiration and decreased fatigue resistance followed by severe muscle weakness in skeletal muscle of mtDNA mutator mice2012

    • 著者名/発表者名
      Yamada, T., Ivarsson, N., Herrnandez, A., Fahlstrom, A., Cheng, AJ., Bruton, JD., Ulfhake, B., Westerblad, H
    • 雑誌名

      J. Physiol

      巻: 590 ページ: 6187-6197

    • DOI

      10.1113/jphysiol.2012.240077

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 低頻度疲労の特徴とメカニズム-骨格筋における変化-2012

    • 著者名/発表者名
      和田正信,山田崇史,松永智
    • 雑誌名

      体力科学

      巻: 61 ページ: 297-306

    • DOI

      10.7600/jspfsm.61.297

    • 査読あり
  • [学会発表] 関節リウマチに伴う筋力低下における窒素化ストレスの役割2012

    • 著者名/発表者名
      山田崇史,倉谷麻衣,神崎圭太,三島隆章,松永智,和田正信
    • 学会等名
      第67回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      岐阜市
    • 年月日
      20120914-20120916
  • [学会発表] 高血糖状態における酸化ストレスが心筋筋小胞体Ca2+-ATPaseの機能に及ぼす影響2012

    • 著者名/発表者名
      倉谷麻衣, 神崎圭太, 山田崇史, 松永智, 和田正信
    • 学会等名
      第67回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      岐阜市
    • 年月日
      20120914-16
  • [学会発表] カルパインの阻害が伸張性収縮による骨格筋の機能の変化に及ぼす影響2012

    • 著者名/発表者名
      神埼圭太, 倉谷麻衣, 山田崇史, 松永智, 和田正信
    • 学会等名
      第67回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      岐阜市
    • 年月日
      20120914-16
  • [学会発表] 繰り返される伸張性収縮間の安静時間の有無がNa+-K+-ATPase活性に及ぼす影響2012

    • 著者名/発表者名
      松永智, 神崎圭太, 倉谷麻衣, 松永須美子, 山田崇史, 和田正信
    • 学会等名
      第67回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      岐阜市
    • 年月日
      20120914-16
  • [学会発表] Involvement of crosstalk between nitrosative stress and altered Ca2+ handling properties in arthritis-induced skeletal muscle dysfunction2012

    • 著者名/発表者名
      Yamada T, Ivarsson N, Grundtman C, Zhang, SJ, Erlandsson-Harris H, Lundberg IE, Bruton JD, Westerblad H
    • 学会等名
      Gordon Research Conferences (Muscle: Excitation/Contraction Coupling)
    • 発表場所
      Les Diablerets, Switzerland
    • 年月日
      20120703-20120708
  • [学会発表] Cardiac Ca2+ and free radical disturbances in mice with arthritis2012

    • 著者名/発表者名
      Lanner JT, Andersson D, Yamada T, Zong M, Lundberg IE, Westerblad H
    • 学会等名
      Gordon Research Conferences (Muscle: Excitation/Contraction Coupling)
    • 発表場所
      Les Diablerets, Switzerland
    • 年月日
      20120703-20120708

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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