研究課題/領域番号 |
24700544
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
白銀 暁 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 講師 (90404764)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脳卒中片麻痺 / 理学療法 / 歩行訓練 / 短下肢装具 / 歩行パタン / 臨床評価 |
研究概要 |
短下肢装具(AFO)を用いて行う脳卒中片麻痺者の歩行訓練において、目指すべき歩行パタンとはどのようなものか。装具歩行では、装具によって片側足関節の運動を制限するので、いわゆる正常歩行と同じ歩行パタンは原理的に不可能となる。本研究では、障害が非常に軽度であり、かつ対象関節の機能以外に障害のない者、つまり健常者が補装具を装着して歩いたときの歩行パタンが最も理想的であるとの仮説を立てた。 平成24年度は、健常成人男性を対象とした歩行分析を行い、金属支柱付短下肢装具を片側に装着した歩行と、装具を装着しない通常歩行とを比較検討した。AFOは組立式のモジュラーレッグブレース(トクダオルソテック)を使用。被験者の足のサイズにあったものを選択し、右足への装着後に調整を行って足関節底背屈0度で固定した。計測は3次元動作解析装置(VICON)と床反力計(キスラー)で行い、Plug-in-Gait マーカーセットおよびモデルを使用した。得られたデータから歩行周期解析を行い、評価指標としてsymmetry index(SI)を用いて立脚時間の左右対称性を求めた。結果、通常歩行ではSIがほぼ0となり高い左右対称性が確認されたが、片側装具装着歩行では、約4%の左右差が生じることが明らかとなった。この差を無くすことは健常者にとっても不可能であるので、これは、片麻痺者が装具を用いて行う歩行訓練の際に目指すべき歩行パタンの上限値の一つと考えることができる。また本年度は、これに加え、同指標の臨床応用に向けて、9軸モーションセンサを用いた臨床評価用の歩行計測・解析システムの構築を進めた。 平成25年度は、引き続いて同システムの構築を進め、これを用いた臨床評価と、実際に歩行訓練にあたる理学療法士からの意見収集を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
9軸モーションセンサを用いた臨床評価用の歩行計測・解析システムの構築にあたり、ソフトウェア開発と、センサのキャリブレーション作業に時間を要している。前者については、プログラミング上の問題解決に予想以上の時間を要したことが理由である。後者については、健常者の計測データから抽出した指標の値の大きさが、想定よりも小さなものであったため、臨床評価においてもより精細な計測が必要となり、それを保障するための校正をより慎重に進める必要があったことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
目指すべき歩行パタンを表す指標の抽出と参照値の取得は終えたので、あとは臨床評価システムを整えることができれば、当初予定していた臨床フェイズの研究を進めていける。臨床評価システムの構築については、時間を要しているものの作業は着実に進んでおり、多少の遅れはあるものの、年度内の実施への支障はないものと考えている。このまま慎重に進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費が生じた主な理由としては、研究補助のための人件費の未使用が挙げられる。必要な時期に適任者が見つからなかったため、研究補助員を雇用しなかった。この研究費については、平成25年度において研究補助員の雇用、または、研究代表者自身で研究を推進する場合の作業時間短縮に役立てられるソフトウェアや物品などの購入を検討している。
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