研究概要 |
本年度は、4週齢のWistar系雄性ラットを対象とし、Level群(求心性収縮,遠心性収縮)、Up-Hill群(求心性収縮優位)、Down-Hill群(遠心性収縮優位)に分類して、それぞれの運動介入を4週間行ったモデルから、先行研究により筋の収縮様式の影響を解析することができるとされている棘上筋を採取し、組織学的・生化学的に解析を行った。 組織医学的な観察としては、まず棘上筋線維の横断面において、巨視的には運動における筋線維の集積像、および筋線維の横断面積の増大等が観察されたが、各グループ間において、有意な差は認められなかった。また、採取した棘上筋からmRNAを抽出し、炎症等に関連するサイトカイン;IL-β1 (Interleukin-β1)、IL-6 (Interleukin-6)、腱やエンテーシス部を構成する主要タンパクであるコラーゲン誘導に関係する因子;TGF-β1(Transforming Growth Factor-β1)、LOX(Lysyl Oxdase、およびCollagenn TypeI and IIIの発現を解析したが、グループ間で有意な発現の差は認められなかった。 棘上筋における骨接合部(エンテーシス部)における形態学的な変化に関しても、各グループ間において明確な差は認められなかった。 本研究の結果において、ラットトレッドミルにおける異なる収縮様式を付与したモデルにおいては、遠心性収縮が有意とされるDown-Hill走行によるメカニカルストレスは、膝関節部、特に膝蓋下脂肪体において、周囲の他の組織と比較し容易に炎症が惹起されやすい可能性が示された。この結果は、成長期のスポーツ障害における膝関節炎症所見の臨床症状に類似する所見であり、今後実験条件を再度精査することにより、より詳細な炎症発生メカニズムが解明できる可能性を示した。
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