研究課題/領域番号 |
24700562
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
菅原 和広 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (10571664)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脳磁図 / 運動前野 / 経頭蓋直流電流刺激(tDCS) / 大脳皮質興奮性 |
研究概要 |
我々はMEG 計測装置を用いて,運動開始前に観察される運動磁界に着目し,視覚反応課題の大脳皮質活動の解析に取り組んでいる.これまでの実験により運動磁界の安定した記録が可能となり,大脳皮質での階層的情報処理の一部が解明された.本研究はこれまでの実験を発展させ,ヒトの運動前野の機能的役割を明らかにすることが目的である.計画している具体的な研究項目は,MEG 計測装置を用い,1)運動前野の活動を捉える計測システムの構築,2)運動遂行時における運動前野の機能解析,3)経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を使用し,運動前野の興奮性を向上させた際の視覚誘導性運動の変化を捉えることとした. 本研究では306chMEG 装置を用い,視覚反応課題はKurata K(1999)らのサルを対象とした実験手順を参考にして行った.運動前野は視覚誘導性運動,また運動待機状態に著明に活動するとされる.初めは単純刺激として色や形に変化をつけ,特定の刺激に対してのみ運動する単純な課題から研究を開始し,その後運動開始前の待機状態で顕著に活動が見られるとされる運動前野の報告を参考にし,予告刺激から運動刺激(指示刺激)を提示するといった視覚提示に工夫を加えた.上述のように視覚提示,運動遂行の両面より課題を検討し,運動前野の活動を捉える計測システムを構築する.これによりさらなる運動前野の機能的役割を明確にすることができると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は初めに計画した単純刺激として色や形に変化をつけ,特定の刺激に対してのみ運動する単純な課題から研究を開始した.実験課題では特定の刺激にのみ反応するGo/NoGo課題を使用し,検証を行った.この研究により,Go刺激時にのみ視覚誘導性運動に関わるとされる頭頂連合野の活動が観察され,NoGo刺激時には頭頂連合野の活動が観察されないことが示された(Sugawara K et al. 2013, Experimental Brain Research (in press)).しかしこの研究で使用した視覚反応課題では運動前野の活動が観察されなかったため,運動準備期を設定し,かつ運動肢を選択するという課題を追加し実験を行った.この実験により,運動開始の約300ms前に運動前野の活動が観察され,ヒトの運動前野が視覚刺激の選択と運動企画に関与していることが示唆された(第42回日本臨床神経生理学会)(Brain Topography投稿中).これらの実験により,ヒトの視覚誘導性運動における大脳皮質の機能的役割と経時的変化が明らかとなり,MEGを用いてヒトの運動前野を計測するプロトコルを構築することができたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は平成24年度に構築した運動前野を計測するプロトコルに経頭蓋直流電流刺激装置(tDCS)を組み合わせ,実験を行っていく予定である. 近年,tDCSはヒトの大脳皮質に可塑的な変化を与えることができると数多く報告されている.我々の実験では,視覚誘導性運動時の反応時間と大脳皮質の活動を計測した後に,運動前野に対してtDCSを使用し,運動前野の興奮性を向上させた状態で反応時間および大脳皮質の活動を再度計測することを計画している.tDCSを実施する際にはNitsche et al.(2001)やKirimoto et al.(2011)の方法を参考にし,運動前野の興奮性を変化させる.tDCSにて運動前野の興奮性を向上させたことで,視覚誘導性運動の視覚受容から運動遂行に至る過程で変化が生じ,更なる運動前野の機能的役割の解明が可能になると考えられる.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は,被験者への謝金や筋電図表面電極,データ記録媒体等の消耗品へ使用する予定である.またMEGを利用し運動に関連する研究報告はいまだ少なく,研究成果を可能な限り早急に発表することが望ましいと考えられるため,本臨床神経生理学会や日本理学療法学術大会および国際学会などで積極的に発表し,また国内・国際誌への投稿も行う.そのため,英文校正費等へ予算を使用する予定である.
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