研究課題/領域番号 |
24700564
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研究機関 | 健康科学大学 |
研究代表者 |
村松 憲 健康科学大学, 健康科学部, 准教授 (00531485)
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キーワード | 糖尿病性ニューロパチー / 運動ニューロン / 筋線維 |
研究概要 |
平成25年度は糖尿病モデル動物の筋の収縮特性の変化について明らかにするために,糖尿病発症後12週間,22週間後の動物と同週齢の対照群を対象に実験を行うことを計画していた.実験は麻酔下の動物の下肢を切開,脛骨神経に刺激用の電極を設置し,アキレス腱を切断して内側腓腹筋あるいはヒラメ筋と筋張力計をつないで,神経幹を電気刺激した際に生じる筋張力を記録した.また,実験終了後に張力を記録した筋を摘出し,免疫組織学的手法を用いて各筋に含まれる速筋と遅筋の割合を調べた. 実験は比較的順調に進行し,病期12週の動物の解析は全て終わり,病期22週の動物の解析もほぼ終了している.実験結果から明らかになったことは以下の3点である.1点目は糖尿病発症に伴って筋の最大張力は減少し,その傾向は特に内側腓腹筋に強いこと.2点目は筋の収縮・弛緩時間が延長し,生理学的特性は遅筋化する傾向にあったこと.また,その傾向は内側腓腹筋に強いこと.3点目には免疫組織学的解析の結果も前述した実験結果を支持ものであり,各筋に含まれる遅筋の割合が増加する傾向にあったことである.また,筋の収縮特性の変化の度合いは動物による個体差が大きいこともわかった. 糖尿病性ニューロパチーによる体性神経の障害は四肢の遠位部に強い傾向があり,筋力の低下も末梢優位に生じるとされてきた.しかし,本研究で示したように下肢同部位に存在する内側腓腹筋とヒラメ筋を比較した場合に,明らかに内側腓腹筋の方がその影響を強く受けていたため,糖尿病に関連して生じる筋の機能障害が古典的な「末梢優位」という比較的単純な概念では説明しきれない障害であることを明らかにできた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は糖尿病モデル動物の筋の収縮特性について調査する予定であったが,予定通り糖尿病発症12週,22週後のラットの脛骨神経を刺激した際に下腿三頭筋に生じる筋収縮の記録を行うことができた.発症後22週の動物についてはサンプル数が若干不足しているが,その不足分を補う実験も4月前半には終了する予定であるため,研究は概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には糖尿病モデル動物に運動療法を行わせ,それまでに明らかにした運動ニューロン・筋障害を予防可能であるのか調査する予定である.また,平成24-25年度に行った研究結果によって運動ニューロン障害は再現性高く観察されるが,筋障害の程度はばらつきが大きいことがわかったため,運動療法の効果判定は運動ニューロン数などを指標に行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究報告の経過で説明したように,病期22週間の動物の実験が4月にずれ込み動物の購入費用の一部が残存したために,次年度使用額が生じた. 4月以降の実験にてラットを購入し,次年度使用額は速やかに使用する予定である.
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