研究課題/領域番号 |
24700565
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 浜松大学 |
研究代表者 |
櫻井 博紀 浜松大学, 保健医療学部, 講師 (60454419)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 慢性痛 / 運動器 / 生体物質 |
研究概要 |
運動器障害をはじめとした神経損傷以外の原因で発症する慢性痛は、発症起点より空間的・時間的拡大を示す慢性広範囲痛を呈し、社会的に大きな問題となっている。そこで本研究では、運動器障害による慢性痛のメカニズム解明を進めるために、運動器慢性痛モデルの開発と、そのモデルを用いて慢性痛の発症・維持要因を探る。 特に、若齢期において慢性痛が発症しにくいことに注目し、生後の発達過程における何らかの要因が発症に関与している可能性が考えられることから、その要因を末梢および中枢から組織・分子生物学的に探っていく。それにより、運動器慢性痛のメカニズムの解明と効果的な慢性痛リハビリテーションの基礎の構築につなげる。 神経損傷以外の慢性痛モデルとして、筋を損傷することにより慢性痛が発症する運動器慢性痛モデルを確立した。このモデルにおいて9週齢(成熟期)処置では、処置後2週目から10週以上にわたり両側性に亢進が長期持続し、慢性痛発症が確認された。一方、3週齢(若齢期)処置では9週齢(成熟期)処置と異なり、慢性痛が発症しなかった。また、筋組織で3週齢処置、9週齢処置で大きな差が見られなかった。そこで、筋組織でのサイトカイン、神経栄養因子など筋損傷および再生に関与する物質の解析として、TNFαをはじめとしてどの要因が関連物質として適切であるかをELISAおよびPCR法を用いて現在試行検討中である。同時に、脊髄組織、血液サンプルでの物質の探索も試行検討中である。これらによる末梢および中枢での慢性痛発症要因の特定により、より効果的な治療・予防につながる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本モデルでは末梢筋損傷が長期痛み行動を引き起こすトリガーとなる可能性が考えられるため、障害筋である下腿三頭筋の凍結試料を作成し、血液サンプルの採取は順調に進んでいる。現在、筋組織でのサイトカイン、神経栄養因子など筋損傷および再生に関与する物質として、ELISAおよびPCR法を用いて現在試行検討中であるが、標的に最適と考えられる物質の決定に時間がかかっている部分に関してやや計画から遅れている。ただし、脊髄組織、血液サンプルでの物質の探索も同時に進めており、全体としてはおおむね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
筋組織でのサイトカイン、神経栄養因子など筋損傷および再生に関与する物質として、ELISAおよびPCR法を用いての検索を継続する。その際、さらに関連文献の検索、関連分野の研究者からの情報も含めて検索の効率を上げる。また、脊髄組織、血液サンプルでの物質の探索も同時にさらに進行させていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
モデル作成および行動実験に必要な薬品・消耗品に加えて、分子生物学的・免疫組織学的実験では、種々の抗体および薬品が必要で、それに応じてディスポーザブル器具・溶液作成のための試薬の購入が必要である。また、関連分野の情報の収集や実験打ち合わせ等による学会や研究施設間の移動の旅費も必要である。さらに、結果をまとめるうえで必要な図書、校正費等も必要となる。
|