研究課題
本研究課題では,メカニカルストレスや熱などの物理的刺激に対する筋細胞応答に着目し,ストレッチまたは熱刺激が筋萎縮の進行過程に及ぼす影響とその作用機序の解明を行い,臨床応用に向けた科学的エビデンスを集積するとともに,ストレッチと熱刺激を組み合わせた治療介入が,より効果的かつ効率的に筋萎縮の進行を抑制するのではないかといった仮説を培養骨格筋細胞(C2C12筋管細胞)と筋萎縮モデル動物を用いて検証することが目的である。平成25年度は,平成24年度に得られた結果を基礎資料として,ストレッチによって誘導される筋肥大メカニズムならびに筋萎縮回復促進メカニズムを検討した。C2C12筋管細胞を用いた培養細胞実験では,ストレッチにより(1)筋管細胞の肥大が生じるとともに,(2)タンパク質合成系の細胞内情報伝達分子(p70S6K,ERK1/2,p38MAPK)が活性化(リン酸化)することを確認した。さらに,mTORC1阻害薬であるrapamycinを投与すると(3)ストレッチによる筋管細胞の肥大が抑制され,(4)ストレッチによるp70S6Kの活性化も抑制されることを確認した。したがって,従来の報告と同様に,ストレッチによる筋肥大はmTORC1/p70S6K経路を介して引き起こされることが示唆された。筋萎縮モデルラットを用いた動物実験では,ストレッチが不動化によって生じたヒラメ筋の萎縮の回復過程に与える影響を検討した。その結果,不動解除後に行うストレッチは(5)筋萎縮の回復を促進するが,(6)ストレッチの対象筋であるヒラメ筋内のheat shock protein(Hsp)72発現量に影響を与えなかった。したがって,ストレッチは骨格筋の量的変化を引き起こして筋萎縮の回復を促進するが,その作用機序にHsp72が関与している可能性は低いことが窺えた。
すべて 2013
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