本研究課題の目的は、骨格筋の加温や電気刺激がインスリン抵抗性を示す骨格筋の糖代謝能に及ぼす影響とその作用機序の解明を行うとともに、骨格筋の加温と電気刺激を組み合わせた治療介入が骨格筋の質的・量的改善を促すことで、より効果的かつ効率的にインスリン抵抗性を改善させ得るのではないかといった仮説を培養細胞とモデル動物を用いて検証することである。 平成25年度は、平成24年度に得られた実験結果を基に、温熱刺激による筋肥大効果ならびに電気刺激による糖代謝改善効果を検討した。 温熱刺激による筋肥大効果を検討した実験では、C2C12筋管細胞に対してインスリン抵抗性の改善を促す温熱刺激を行うとheat shock protein(HSP)70の発現量は増加するが、肥大は生じないことを確認した。これらの結果から、インスリン抵抗性の改善を促す条件の温熱刺激はHSP70の発現量を増加させるが、筋肥大を引き起こさない可能性が示唆された。 電気刺激による糖代謝改善効果を検討した実験では、C2C12筋管細胞に対して電気刺激を行うと糖取り込み活性が亢進するが、この糖取り込み活性の亢進はPI3K阻害薬であるwortmanninの投与によって抑制されることを確認した。また、高脂肪食負荷ラットの両側大腿四頭筋に対して電気刺激を行うとHSP70およびglucose transporter(GLUT)4の発現量が増加するとともに、インスリン抵抗性が改善するが、GLUT1およびinsulin receptor substrate(IRS)1の発現量は変化しないことを確認した。これらの結果から、電気刺激は高脂肪食の摂取によって惹起されるインスリン抵抗性を改善する効果があり、この作用機序にはHSP70やGLUT4の発現量増加が関与している可能性が示唆された。
|