研究課題/領域番号 |
24700570
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
松尾 篤 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (80368604)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 非侵襲性脳刺激法 / 経頭蓋直流電気刺激 / ミラーセラピー |
研究概要 |
本年度は,非侵襲性脳刺激法(経頭蓋直流電気刺激:tDCS)と運動錯覚を使用した介入法によって,健常者における上肢巧緻運動の運動学習に及ぼす影響を検討した.また,頭表上への刺激電極の設置部位による影響も併せて検討した.tDCSによって脳の興奮性を向上させ,さらに鏡を使用した視覚性錯覚刺激を付与することによって,tDCS単独介入よりも学習が促進されるかどうかを明らかにすることを研究目的とした.3日間の上肢巧緻運動の運動学習課題を実施し,経日的にその運動学習効果を測定した.また,機能的近赤外イメージング(fNIRS)を使用して,介入前後の脳活動を記録し,比較した. 結果は,tDCS単独の介入に比較して,tDCSに運動錯覚を組み合わせた介入において,運動学習の成績が有意に低下することが確認された.fNIRSの結果からは,運動錯覚介入やtDCSと運動錯覚組み合わせ介入では,大脳皮質の運動関連領域の賦活はあるものの,その範囲が広範性であり,運動前野,左右前頭前野にまで拡大した.一方,tDCS単独介入では,運動課題に寄与する一次運動皮質に限局性にその活動増加が観察された.さらに,tDCSと運動錯覚を組み合わせる際の電極の設置部位に関しては,運動課題に関与する半球側に陽極刺激をする方法が,若干学習成績が良好な傾向が観察された. 運動スキルの向上とともに,脳イメージングによって運動関連皮質の活動増加が観察され,またそれらの活動がより限局性であるほどに,運動スキルの学習が促進されることが明らかとなった.今後は,脳卒中患者にtDCSによる非侵襲性脳刺激を適応し,さらには上肢運動障害の治療に応用されているミラーセラピーを組み合わせて,その臨床効果を検討していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の通りに研究環境が整備され,おおむね順調に研究が遂行できている.また,その成果も少しずつ公表できている.
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今後の研究の推進方策 |
現在は,臨床研究へと発展していくための準備を進めており,各病院における倫理委員会審査を経て,研究環境の整備が進行中である.臨床研究において,患者に対するtDCS介入の有用性・有効性を検証することにより,神経リハビリテーションの新しい治療方法論の確立が期待できると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の未使用額が122,417円あるが,これに関してはtDCS消耗品等の支出および人件費・謝金の支出が抑えられたことによるものであるが,次年度には複数施設での臨床研究を実施予定のため,移動費および謝金等に繰り越して使用を計画している.次年度研究費に関しては,物品費(fNIRSデータ解析用可搬型PC,tDCS消耗品),旅費(研究データの公表,複数施設での臨床研究の実施にともなう移動費),人件費・謝金などの使用を予定している.
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