研究課題/領域番号 |
24700571
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
冷水 誠 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (40388905)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 運動学習 / 報酬 |
研究概要 |
平成24年度は運動パフォーマンスにおいて,外的報酬あるいは内的報酬のどちらが効果的な学習をもたらすかを健常若年者および成人を対象に検証した。 1つ目の実験では,健常若年者(平均年齢20歳)を対象に,連続反応学習課題において異なる報酬付与の違いを検証した。用いた報酬は,外的報酬として金銭付与,内的報酬として自身の結果のフィードバックおよび他者の結果の提示(目標設定)とした。その結果,金銭を報酬として与えられた群と比較して,自身の結果と他者の結果を与えられた群において即時的に高い学習効果が得られる傾向が示された。 2つ目の実験では,健常成人(平均年齢69歳)を対象に,バランス課題において内的報酬として異なる目標設定の与え方による影響を検証した。用いた目標設定の与え方は,自身の結果よりも20%高い目標設定(High target;HT)または自身の結果よりも20%低い目標設定(Low target;LT)とした。HTでは高い目標設定に対して自身の能力を伸すことによる有能感(報酬)を得ようとする動機づけが生じると考えられ,LTでは自身の結果が目標を上回っていることによる有能感(報酬)が得られている状況と考えられる。これらの目標設定の前後でのバランス能力を比較した結果,HTによって高いバランス能力の向上が認められた(Hiyamizu M,et al. J Novel Physiotherapies. 2012)。 これら2つの実験結果から,健常成人における運動パフォーマンスの効果的な学習には金銭付与による外的報酬ではなく,自身の結果のフィードバックさらには目標設定とその目標に対する有能感などによる内的報酬の付与が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画どおり,健常若年者を対象とした外的報酬と内的報酬の効果の違いを検証した。また,若年者だけでなく健常成人(高齢者)を対象にして内的報酬としての目標設定による羽フォーマス効果を明らかにした。なお,当初の計画において脳機能イメージング装置を用いて課題実施中の脳活動を計測予定にしていたが,現段階で計測結果の処理及び分析中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の結果を踏まえ,外的報酬と内的報酬による運動学習における違いを脳卒中患者を対象に検証し,さらには内的報酬の具体的な与え方による効果の違い等について検討していく。また,脳機能イメージング計測によってその学習神経メカニズムを明らかにしていく。 さらに,学習した運動パフォーマンス結果と脳活動の関係性を検証し,単なる報酬による運動学習効果の有無だけでなく,症例による効果の違いを科学的に捉える。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度購入予定であった上肢機能システムおよびシステムに付随するソフトウェアについては,運動学習課題をバランス課題としたため購入に至らなかった。また,研究成果に関する国際発表は次年度に予定している。従って,次年度は上肢運動学習課題として用いる上肢機能システムおよびその附属ソフトウェアを整備し,今年度および次年度の研究成果に関する国際発表にて研究費を使用する計画にしている。
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