平成25年度は脳卒中患者を対象に,上肢運動学習における外的および内的報酬による効果の違いを脳活動を踏まえ検証した.外的報酬としては学習向上に応じた金銭付与による動機づけ,内的報酬は目標提示(他者の結果)による有能感への動機づけとした.さらに,これらの違いによるモチベーションへの影響も検証した. 被験者をコントロール群,金銭付与群,目標提示群に分類し,一定時間の練習後に休憩を挟みながら学習課題を3試行実施した.コントロール群では自身の結果をフィードバックしながら実施した.金銭付与群では1試行後に休憩をはさみ,2試行目にて学習が向上すれば金銭を与えると指示し,その後2回目の休憩をはさみ,3試行目には学習向上に関わらず金銭を与えないよう指示した.目標提示群では1試行後に自身の結果をフィードバックすると同時に,同年代の結果を比較提示し3試行まで実施した.3群ともに各試行間の休憩時間は自由とし,練習しても良いことを伝えた.分析は各試行における運動学習成績を比較すると同時に,モチベーションとして休憩時間の各被験者の自主的な練習量を測定し比較した.その結果,目標提示群のみ各試行において有意な学習向上を示し,金銭付与群では2試行目のみ有意な向上を認めたものの,金銭付与がなくなる3試行目では学習効果が認められなかった.また,休憩時間における自主的練習量においても,いずれの休憩時間においても目標提示群がもっとも多く,モチベーションの高さを示した. 今回の結果から,他者の結果を目標として提示することは,金銭付与による外的報酬と比較して学習効果とモチベーションの維持において良好な結果をもたらすことが示唆された.しかしながら,学習課題実施中の脳活動については,安静時と比較して前頭前野背外側領域および高次運動野を中心とした活性化が認められたものの,報酬の違いによる明確な差は認められなかった.
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