本研究では脳梗塞後のリハビリテーションにより神経回路の再編成がどのような分子機序で起こるのかを解明することを目的として実験・解析を行っている。初年度は主に実験システムの構築を行い、脳梗塞の作成方法・運動野マップの解析方法・運動機能評価方法を確立した。2年目はこれらの実験方法を用い運動野マップの変化が脳梗塞によってどのように変化するかを調べた。この実験により運動野マップの運動野尾側前肢領域(CFA)を脳梗塞により破壊すると運動野頭側領域(RFA)が有意に縮小するが、RFAの大きさは時間とともに回復し、リハビリテーションによりこの回復が改善されることが分かった。3年目である本年度は、このリハビリテーションによる運動野の変化がどのような機序で起こるのかを逆行性トレーサーであるフルオロゴールドと順行性トレーサーであるBDAを用いて調べた。その結果リハビリテーションはRFA領域に対する他領域からの投射には影響を与えないが、RFA領域から頸髄へ投射する神経線維の進展を促進することがわかった。これらの結果は、リハビリテーションが脊髄レベルでの構造変化を引き起こすことを示しており、現在まで分かっていなかったリハビリテーションの機能回復メカニズムを解明することにつながる結果であると考えられる。
|