自分の体が自分自身のものであるという感覚(自己身体所有感)は、触覚、固有受容覚、視覚など多感覚の統合により成り立っていると考えられている。この自己身体所有感は、通常であれば破綻することはないが、慢性疼痛患者において異常が生じていることが知られており、さらに痛みと関連することが報告されている。しかし、身体所有感の変化が大脳皮質における体性感覚情報処理にどのような影響を及ぼすかは明らかとなっていなかった。そこで、本研究ではミラーボックスを用いて身体所有感の喪失状態をつくり、その喪失が体性感覚情報処理に与える影響を脳磁場計測装置を用いて調べた。結果、身体所有感の喪失は、一次体性感覚野を活動源とする成分(M50)を増大させることを明らかにした。このことは、M50が視覚、固有受容覚および触覚からの情報を統合した後の成分であることを示唆し、この成分が身体所有感の形成に関連する成分である可能性を示した。
|