前年度に引き続いて「三次元動作解析による痙縮の定量的評価法の策定と,その信頼性,妥当性検証」を行った.上下肢評価ともStroke Impairment Assessment Set (SIAS)に準じた動作を,1. 最大速度で動かす課題,2. 最大限の可動範囲に到達するためのゆっくりと動かす課題の2つの教示で計測した.各マーカ(上肢なら手関節)の拳上距離と動作時間を用い,2つの教示における比を指標とした.健常人5例と片麻痺患者16例で計測を行い,級内相関係数は0.845~0.940と比較的良好な再現性を得た.妥当性の検討では,MAS (Modified Ashworth Scale)と-0.696~-0.821の強い負の相関関係を認めた.続いて,「回復期リハビリテーション病棟入院患者における痙縮の経時的変化」として,42例のMASおよび動作解析を経時的に行った.平均1か月間隔の計測の間に,麻痺(SIAS運動項目で評価)の変化を認めた症例が20例存在し,麻痺が重度から中等度となった症例では指標が低下し,中等度から軽度となった症例では指標が改善する傾向を認め,麻痺自体の変化に影響を受けることが明らかとなった.麻痺の変化しなかった症例では,MASが(1+を1.5とした場合に)平均1.56から1.93に変化したのに対し,動作解析では距離比が0.97から0.94,時間比が0.66から0.59と変化し,MASと同様に痙縮がやや悪化したとの結果を得た.最後に,「A 型ボツリヌス毒素による痙縮治療例における治療後の痙縮の定量的変化」として,ボツリヌス療法を行った慢性期片麻痺患者の痙縮評価を行った.5例の継時的変化を確認したところ,注射前と比較し2週後で明らかな指標の改善を認め,6週後,12週後で指標値が低下し,再度痙縮が戻る過程が観察された.
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