従来型の文字から音声に変換んする発話障害者のための音声支援機器は、入力に要する漢字変換や絵の探索に時間がかかり話し出しに遅れが生じる問題や、自由なリズムをつけたりすることができない問題、曖昧音を表現できないという問題がある。本研究では、「舌の動き」を「指の動き」に置き換えて音声合成のパラメータを制御する新しい発話支援方式について、改良を進めた。指の位置や動きに応じた声を、楽器のようにリアルタイムに生成できる支援装置である。 平成25年度までに音楽表現や子音らしい音を生成するための速度を補う方法について、一定の筋道をつけたが、Windows8、8.1端末の発売の遅れやモバイル端末機器の状況の変化に対応が必要であったため、研究機関を1年延長し、平成26年度が最終年度となった。 平成26年度には、機器の改良の研究として、具体的にペンや指で操作可能な速度の閾値などを定めて、初心者がゆっくり操作しても操作速度を自動的に補助する機能を実装し、より子音らしい音を生成できるように改良し、実用性を高めた。また、補助記号や動的な動線についての考察を行い、必要な要素を整理した。 一方で、機器の応用の研究として、平成25度にリリースされたiPhoneアプリ端末を用いて、実際に障害を持ったかたに使用してもらいながら、日常生活においてノンバーバル情報がどのような場面で活かされるかを具体的な場面を想定して考察した。実験での患者の保護者の意見から、意識レベルが低下し、単語の生成が困難な筋・神経系の重症患者においても非言語の音声コミュニケーションが期待できるほか、新しい機器を扱うということ自体が患者自身への活動の良い刺激になる可能性も示唆された.
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